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空想ガストロノミー

2021.03.22

Fly me to the moon

イラスト・文/田中 麻記子

世界で何があろうとも、同じように季節は巡って
あっという間に春ですね!
この定期的な四季の移り変わりを肌で感じると、
とても安心するものです。

2016年スタートの、この食べ物連載「空想ガストロノミー」も
ついに最終回となりました。
これまでフランスの旬の食材をテーマに
食いしん坊な私の妄想をアニメーションで表現してきました。

ラストに選んだ春の食材は…日本のタケノコ!
フランス語では、“Pousse de bambou ”(プス・ド・バンブ)。
この採りたてのフレッシュでワイルドな筍は、
フランスのマルシェではお目にかかったことはナシ。

勢いよく出てくる若い筍の
生命力あふれるザク!ザク!とした食感は、
なんとも贅沢な春のひと品。

私たちが美味しくいただく先の部分は、
早いうちに摘み取らないと苦味が増して、
放っておくとものスゴイい速さで竹として成長。
一方、土の中でも勢いよく根をはやし、あらゆる所に筍が。

品の良い和食の代表格、「筍の土佐煮」や、
わかめと煮付けた「若竹煮」も、
そんな激しい筍の性格とは裏腹な
おっとり優しい味わいが魅力の一品。

ああ、しばらく土佐煮もご無沙汰です…
と空想していたら…
ひと口大の筍が乙女の髪をとかす櫛に見えてきて。。。

5年間、皆さまに楽しんでいただき、感謝いたします。
最後は筍と共に月へ!

田中 麻記子

イラストレーター/画家

1975年 東京生まれ フランス在住
水彩、油彩、パステル、鉛筆を中心に国内外で発表。
食べ物デッサンの画集「La collection gastronomique」(HeHe / ヒヒ)、ピエール・エルメ・パリ・ジャポン「Macaron Baby」のデザインを手掛ける。
photo:Aya Watada
http://tanakamakiko.com/

GIFアニメ制作協力/植木 駿