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えぴきゅりあん通信

2021.11.19

♯8 Vin chaud(ヴァン・ショー)の森

アニメーション・文/田中 麻記子

手袋までとは行かずとも、セーターやマフラーを
引っ張り出すくらいにだいぶ寒くなってきたパリ。

フランスのアパルトマンの暖房は建物自体を暖める
セントラルヒーティングが主流。
季節になると自動的に始動してリビング、寝室、バスやキッチン…
全ての部屋が同じ温度で暖まるという優れたシステム。

しかし我がアパルトマンのそれはというと…
割と頻繁に故障するので、体に毛布をぐるぐる巻きにしながら
仕事をした日も。。。
そうなった時はブルブル震えながら同じアパルトマンに住む
管理人の老マダムに「一体いつ直る?」と聞くのですが、
日本のように工具を持った業者の人が飛んでくる、
なんてことは絶対になく、気長に忍耐強く待つしかないのが現実。
「明日よ!」と言われてもそれがその通りになる確率は低め。

そんな時には、vin chaud(ヴァンショー)!
(※フランス語でホットワイン)
マーケットで買った何の変哲もない飲みかけの赤ワインを
鍋に勢いよく注ぎスパイス棚のシナモンをポキッと折って、
クローブもひとつまみ、レモンかオレンジがあれば、
ギュッと絞って皮ごと煮込んで。
お部屋には甘くてスパイシーなワインの良い香りと蒸気が漂って
身体はポカポカ、ビタミンCも取れるという優れもの!
火にかけることでアルコールも少し飛ぶので何杯でも。。。

窓の外は街路樹が真っ赤に染まってとても美しい季節。
この時期ポットにVin chaudを入れて近くの公園で紅葉を見ながら
ホッとするのも大好きな過ごし方。
もう少し寒くなってしまうとあまり出来ないので、
今だけの旬で贅沢なお楽しみなのです♪

 

♪インスタでは音楽付きバージョンを公開しています♪
@hanatsubakimag

 

田中 麻記子

イラストレーター/画家

1975年 東京生まれ フランス在住
水彩、油彩、パステル、鉛筆を中心に国内外で発表。
食べ物デッサンの画集「La collection gastronomique」(HeHe / ヒヒ)、ピエール・エルメ・パリ・ジャポン「Macaron Baby」のデザインを手掛ける。
photo:Aya Watada
http://tanakamakiko.com/