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SHISEIDO Your Song

2023.08.17

3. DNAの伝言

文藝春秋 2023年9月号 掲載より

わたしの人生、いま何時だろう?それは人生時計、という考え方らしい。今の自分の年齢を一日の時刻に置き換えてみるもので、たとえば平均寿命を80歳とすると20歳はまだ朝の6時となる。それはともかく、50代を生きてしばらくたつわたしや友人はここ10年ほど、ひたすらいろいろなことに向き合ってきた。母の看病。猫も看病。仕事での役割の変化。夫婦の関係の変化。子の巣立ち。思ってもみない体調や感情の揺らぎ…。ざっくり挙げるだけでもなかなかのラインナップ。ランチでもしたら、まあ話が尽きない。いつだって何かと戦っている気がするし、自分のことは後回しになるし、そろそろ馬力も利かないし。
「お母さーん、いる?みたらし団子、買ってきたよ」と、娘がやってきた。巣立ったわりには、ちょくちょく実家に寄る。そしてじきに愛する人と小さな結婚式を挙げる。「で、子どもの頃の写真が必要になってね」。奥から古いアルバムを引っぱり出してきた。アルバムの中には、つい昨日のことだったはずなのにいつのまにか懐かしくなってしまった愛おしい一瞬が並ぶ。「しかし。お母さんってずっとキレイだね、ずるくない?私はいったいどんな50代になるんだろ」と娘が呟くものだから。「どんな50代になれるのか、気になる?」と、つい謎な問いかけをしてしまう。
「DNA検査プログラム?」そうです。先日わたしは生まれて初めてDNA検査プログラムなるものを受けたのだ、それはDNAから“肌の”運命を知る検査。自分の生まれ持った体質…本来はシミやしわができやすいか、紫外線に強いのか弱いのかなどがわかり、結果に添ってこれから先なりたい肌に近づけるパーソナルなアドバイスがもらえるというものだ。「その検査をなぜ今、受けたの?」それはね、半世紀生きてきた大人の女は、この先の人生、もっと自分を大事にしたいと思ったからだよベイビー。そう思ったら、今すぐそっちへ歩めばいい。どうやら50歳は人生の15時過ぎ。ここいらで午後のお茶を楽しんでもいい時分なのだ。DNAが教えてくれる、過去と未来のはるかな一本道。いつか振り返ったときは笑っていたい。この、ままならないけど豊かな年代を愛しながらも機嫌よく生きていこうよわたし。と思っている。
資生堂の、ヒトとAIによる肌のDNA検査プログラム
Beauty DNA Program

モデル:桐島かれん、森繪
フォトグラファー:上田義彦
コピーライター:国井美果
アートディレクター:高田大資
クリエイティブディレクター:山形季央
ヘアメイク:深野結花
プロデューサー:綿引しな乃