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今月の詩

2018.02.05

皆紅

詩/葦田不見

親は子に
受験生はノートに
あの子は袖口に
街は下水に
木は枝に
空は夕刻に

皆、紅を引く

選評/文月悠光

青みの強い派手な口紅が好きで、自分には似合わないけれど、つい集めてしまいます。私の心もとないお喋りを、紅が力強く縁取ってくれる気がして。紅を引くことは、変化への宣言、ある種の決別に思えます。過剰に飾り立てるのでも、誰かに媚びるのでもなく、
ただひとすじの紅を引くことが、軽やかな旅立ちのしるしです。
さあ、私に紅を。