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今月の詩

2024.04.03

すいみん

詩/冬野いか

眠いけど、優しさを、ひとつずつ送るために。はーと、はーと、と続くなかで、たまにある星。その風景。電子的だね。回復、回復。よつばみなかった? ときかれて正直に答えると、空から徐々に崩れてった。でもそれも回復。ふとんって、なんであんなにあったかいの? 春が詰まっているからだね。わたしたち、夜になると、必ず春になれるんだね。そのようにして眠りにつくと、およそにんげんらしくなる。かおつきも、どこかりりしい。4月のかおつきだ。鏡のまえのわたしより。たんぽぽもたまには送りながら、今日も眠りにつきたいです。

 

 

選評/暁方ミセイ

 眠るまでのわずかな時間に、布団のなかでスマホをいじり、誰かとやりとりをしている場景が浮かびます。電子的な風景は、もはや日常の一部。「すいみん」と題された詩が、そんなスマホの画面からはじまって、有機的な着地点へと移ろっていくことに感銘を受けました。
 短い作品なのに、「回復」という言葉がデジタルな世界と「よつば」「ふとん」というフィジカルな世界を繋ぎ、春の「たんぽぽ」へと読者を誘います。
 この詩の「にんげん」は、暖かい春を感じ、よく眠って、「鏡のまえのわたしより」凛々しく目覚めるもののようです。自意識や、社会の目によって形作るわたしではなくて、四季や、朝と夜、そういう自然のサイクルのなかでのびやかにただ生きるものなのです(そういえば、「回復」という漢字は、繰り返されるサイクルをイメージさせますね)。
 脳ではなく、体が実感することができる喜びを、あえて平易でやわらかな言葉をつかって見事に表現している作品だと感じました。