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SHISEIDO MUSEUM

2020.07.17

【特別企画】SHISEIDO MUSEUM 番外編「資生堂ナチュラルグロウ」

資生堂が時代時代にお送りしてきた広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーをご紹介する「SHISEIDO MUSEUM」。資生堂が広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです。

資生堂ナチュラルグロウ(1969年) /Art Director: 水野 卓史/Designer: 八村 邦夫/Photographer: 梶原謹輔/Model: 岸さおり

資生堂ナチュラルグロウ

 「マスク着用」が昨今のグローバルスタンダードとなりましたが、それだからといって化粧することをあきらめたくはありませんね。マスクに隠れない目元のメイクアップだけでも、クリエイティブに個性を表現できるはずです。今回は、目元に焦点をあてた1969年の「資生堂ナチュラルグロウ」の広告をご紹介します。
 1968年に資生堂初のフルメイクアップブランドとして「資生堂ナチュラルグロウ」が生まれた背景には、60年代のファッショントレンドの大きな変化があります。戦後に開花した50年代のフェミニニティにあふれるエレガントな女性像が、60年代に入り宇宙開発やユース世代の台頭、対ベトナム反戦運動などの社会動向の影響によって一新、“女性らしさ”に縛られない、自由で自然体な女性像が新たな理想となりました。
 この広告作品も、「あなたの変身は目から始まる」というキャッチコピーとともに、当時の女性へ向けて、時代の価値観の変化に合わせた自身の変容をうながしています。自然体を象徴するような緑色を基調にしたヴィジュアルでは、民族調のアクセントがついたヒッピー風マキシドレスに身を包んだ女性が堂々と中央に腰を据え、淡い緑色に彩られた力強いまなざしを未来の方向へ送っています。化粧品の広告ではありますが、自立したひとりの女性の在り方・存在感こそがこのヴィジュアルの主役。既成概念にとらわれずもっとナチュラルに、メイクアップとファッションをとおしてあなた自身の個性をいきいきと表現してほしい、というメッセージが込められています。