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SHISEIDO MUSEUM

2023.08.22

SHISEIDO MUSEUM #14 「ピンクポップ」

資生堂が時代時代に生み出してきた商品パッケージや広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。資生堂が商品や広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです。

 資生堂口紅「ピンクポップ」1968(昭和43)年
Art Director:中村誠 Designer:久保襄介、高田修地 Photographer:横須賀功光 Model:ティナ・ラッツ

資生堂口紅ピンクポップ「かわいい色がポップする」

 ピンクのボールが印象的で、華やかで可愛い衣装、モデルのはじけるような笑顔。見るものの心を明るくするようなこの印象的なポスターは、1968年春のキャンペーン「ピンクポップ」のメインポスターです。
 資生堂では、1961年のマス媒体を利用して全国的に宣伝活動を行う最初のキャンペーン「キャンディトーン」に始まり、毎年春の訪れと共に、その年の流行色にあわせて新色口紅を発売してきました。
 1960年代は世界的にミニスカートが流行するなど、ライフスタイルも文化も大きく変化していった時代でした。
 資生堂のキャンペーンはそうした時代の明るさと軽快な自己主張をピンクという色を通して世の中に発信していきます。「ピンクポップ」というこのキャンペーンは、単なる色彩やファッションイメージの提案を超えた、同時代の人々の新しい生き方を提案する試みだったのです。
 それ以降、メイクアップの流行色の変遷の中で、ピンクという色はたびたびそこに立ち返っていくキーカラーの一つとなっていきます。ピンクという色には、今という時代に人それぞれがWell-beingに暮らしていくためのヒントが秘められているのかも知れません。

文/丸毛敏行(資生堂 アート&ヘリテージマネジメント部)

*本記事は『花椿』2023年号に掲載しております。
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