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SHISEIDO MUSEUM

2022.09.15

SHISEIDO MUSEUM #13「現代化粧百態繪端書」

資生堂が時代時代に生み出してきた商品パッケージや広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。資生堂が商品や広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです。

 

 

「現代化粧百態繪端書」
資生堂宣伝用絵葉書シリーズ
(1932年)

 「現代化粧百態繪端書」は1932年に制作された、資生堂化粧品購入者に抽選で差し上げる10枚1組の絵葉書のシリーズでした。
 絵葉書には、化粧をする女性の姿だけではなく、スポーツ(ゴルフ、乗馬、ボート、キャンプ、スキー、スケートなど)やドライブ、ピクニック、コンサート、ダンス、夜会、旅行、結婚式など、当時の流行の最先端を行くさまざまなライフスタイルが生きいきと描かれており、当時の女性の生活の様子がわかる興味深い内容になっています。
 これらの絵葉書は、当時資生堂意匠部に在籍していた前田貢など数名のイラストレーターによって描かれたもので、そのデザインには、その頃ヨーロッパで流行していたアール・デコ調のモダンな色彩感覚と斬新な構図が取り入れられており、今見ても新鮮に映ります。
 この絵葉書シリーズは、化粧品購入に対してのいわば景品でしたが、戦前アート絵葉書の分野では市場に出ることがほとんどないことから、その質の高さともあいまって、極めて貴重な作品として、コレクターやファンが多いものともなっています。
 大正時代末頃からつくられ配布された資生堂の広告用のマッチラベルと同じように、モダンなデザインと華やかな色彩が印象的なこれらの絵葉書からは、当時の都市生活の華やぎと賑わいが感じられます。
 「化粧百態」ということばが表すように、新しい時代を迎え女性の生き方も多様化し生活様式の幅も広がる中で、軽やかに時代の変化の波に乗り新しい文化的な生活を楽しむ女性たちの絵姿は、自由と未来への希望に溢れており、明るい未来を願いながら今を生きる私たちへの時代を超えたエールのようにも感じられます。

文/丸毛 敏行(資生堂 アート&ヘリテージマネジメント部)