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SHISEIDO MUSEUM

2021.08.13

SHISEIDO MUSEUM #12 「資生堂香水「禅」」

資生堂が時代時代に生み出してきた商品パッケージや広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。特別企画として、こちらでバックナンバーをご紹介します。資生堂が商品や広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです

 1964(昭和39)年、欧米におけるオリエンタルムードの流行と、日本でのオリンピックの開催を機に、資生堂はアメリカへの本格的な進出を決めました。それにあたり輸出向け商品として開発されたのが、資生堂香水「禅」です。
 商品開発にあたっては、アメリカ人女性の好みを広く調査し、日本文化を象徴するものとして海外でも知られる「禅」のイメージを香りに表現、外装も日本的なデザインとしました。
パッケージデザインを担当した山本武夫は、資生堂意匠部(現在のクリエイティブ本部)にも所属した日本画家・装幀家である小村雪岱に学生時代から師事し、日本画や舞台美術を学びました。
 「禅」のデザインにおいて山本は、蒔絵の代表的作品と言われる高台寺蒔絵を参考に、黒漆塗りの落ち着いたイメージを表現。秋の野や庭に咲く草花を一面に配し、自然の静けさの中に現代的な洗練された感覚も盛り込んでいます。また容器にも外箱にも、黒を基調とした東洋の幽幻とも言うべきムードをまとわせました。
 50年以上前に開発され、今もオーデコロンとして発売されている香り「禅」。「禅」という名前に込められたスピリットやその東洋的な佇まいは、ときを超え、変化の激しい現代を生きる私たちにも、ときに立ち止まり、静かに自然の美しさを慈しむことが心の健やかさにつながることを思い起こさせてくれます。

文/丸毛敏行(資生堂 社会価値創造本部)