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SHISEIDO MUSEUM

2023.08.24

SHISEIDO MUSEUM 特別版「資生堂チェインストア制度100周年」

資生堂が時代時代に生み出してきた商品パッケージや広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。資生堂が商品や広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです。

「資生堂チェインストア100周年」

 今から100年前、1923(大正12)年9月に発生した関東大震災で、日本経済は壊滅的な被害を受け、化粧品業界もまた大きな混乱の中にありました。当時の化粧品業界は乱売(値引き競争)が過熱し、小売店はもとより問屋、メーカーともに厳しい経営を余儀なくされていました。
 そのような中、同年12月、震災から資生堂を再建する際に、当時の支配人・松本昇(後に第二代社長)がアメリカ留学で学んだマーケティング手法を基に「化粧品連鎖店制度(後のチェインストア制度)」を打ち出します。この制度によって、メーカー、取次店、小売店、生活者も一様に、適正な利益を分かち合うことを目指しました。
 福原信三は現在の『花椿』の前身にあたる広報誌『資生堂月報』の中で「チェインストア組織について」というタイトルでこのように書いています。「資生堂が吟味して製造した化粧品を、資生堂と同じ心持で、チェインストアの方に売って頂き、之に依って製造者と販売者が正当の利益を得るの他、何等不当の利益を顧客から貪ることなく、従て購買者は安神して、何処でも品質の同一のものを同一の値段で求めることが出来るようにしたのであります。」(原文ママ)当時まだ化粧品業界に参入したばかりの小さなメーカーだった資生堂のこの提案に対して、業界からの反応は冷ややかなものでした。しかし、小売店への粘り強い説得の結果、大手取次店からの支援も得て、「共存共栄」という理念に共鳴する小売店が次々と契約を結ぶようになります。その結果、当初の「200店くらいの契約小売店があれば」との予想を大きく上回り、翌年には契約小売店数は1700店にのぼりました。
 チェインストア制度導入の成功によって資生堂の「共存共栄」という理念は確立され、制度制定から現在まで100年にわたり、多くの生活者に資生堂の美を伝え続けてきました。資生堂チェインストアは、化粧品と出会う場、人々との出会いを生み出す場、新しい自分に出会える場として、これからも生活者の皆さまに寄り添い、豊かな未来を
築いてゆきます。

文/丸毛敏行(資生堂 アート&ヘリテージマネジメント部)

*本記事は『花椿』2023年号資生堂チェインストア100周年特別版に掲載しております。