資生堂が時代時代にお送りしてきた広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。自粛期間特別企画として、こちらでバックナンバーをご紹介します。資生堂が広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです。
「資生堂クインテス」
野性的でありながらどこか賢者のような落ち着きと知性を感じさせる犬の表情と、意味深いコピーの組み合わせが斬新な印象を与えるこの広告は、1977年の「資生堂クインテス」の雑誌広告です。
大型犬と人とを組み合わせた資生堂の広告では1968年の「男性の時代・MG5の時代」の男性と犬が華麗にジャンプしているものがありますが、この「資生堂クインテス」の広告の静かな表現にもまた深い趣があります。
1970年に誕生した「資生堂クインテス」の冬季プロモーションでは、従来、基礎化粧品の広告で行っていた商品や女性の表情を中心とした定型パターンを破り、自然をテーマにしたイメージ訴求型のシリーズ広告を展開しました。この広告も映画のワンシーンのような味わいと物語を感じさせてくれます。「クインテス」とは、英語の「Quintessence(精粋、真髄)」からの造語。「義」と「貴」という広告コピーには少し珍しい硬質なことば遣いが、真っ直ぐな瞳で前を見つめる犬と、女性の表情と相まって、このブランドの凜としたイメージづくりに寄与しています。
文/丸毛 敏行(資生堂 社会価値創造本部)