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SHISEIDO MUSEUM

2020.05.03

【特別企画】SHISEIDO MUSEUM #1 「FOREVER ENCHANTING」

資生堂が時代時代にお送りしてきた広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。自粛期間特別企画として、こちらでバックナンバーをご紹介します。資生堂が広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです。

「FOREVER ENCHANTING」(1963年)海外向け企業広告/ Designer: 中村 誠/Photography: 横須賀 功光/Costume: 三宅 一生/2018年春号掲載

「FOREVER ENCHANTING」

 幻想的な雰囲気に包まれながら三人の女性が美しく舞う姿が描かれたこのポスターは、東京オリンピックの開催を翌年に控えた1963年に制作されました。モチーフとなっているのは、イタリアの画家ボッティチェリが描いた『プリマヴェーラ(春)』に登場する三美神です。
 世界最大のスポーツの祭典が日本で開催されることに、多くの日本人が夢や希望を感じていた時代。日本の広告デザイン界では、世界に通用する表現をと模索が続けられていました。そのような中、動きのある人物が撮影できると聞きつけ、日本ではまだ珍しかったストロボ撮影に挑戦することになったのがこの広告です。資生堂宣伝部(現 クリエイティブ本部)で活躍していた若手デザイナーとフォトグラファーのほか、当時 多摩美術大学に在学中だったファッションデザイナーの三宅一生が衣装を担当しています。
 キャッチコピーの「FOREVER ENCHANTING」は「永遠に魅了して」という意味。広告に描かれた世界はダイナミックな動きの中に静けさを宿しており、日本的な美意識を響かせながらも時代や空間をも超越した未来的な雰囲気を感じさせます。若き才能たちが描いた「永遠の美」は、目覚めることのない夢の世界に今も生き続けているのかもしれません。

文/小泉 智佐子(資生堂 企業資料館)

資生堂 企業資料館