資生堂が時代時代に生み出してきた商品パッケージや広告作品、そのクリエイションにこめられた“美”のストーリーを紹介する本誌企画「SHISEIDO MUSEUM」。特別企画として、こちらでバックナンバーをご紹介します。資生堂が商品や広告をとおして提案してきた、未来へ向けての希望のメッセージを感じていただけたら幸いです
この雑誌広告は、アートディレクター、デザイナーとして、多岐にわたる分野で新しい時代を切り開き、世界を舞台に活躍した 石岡瑛子(1938-2012)が、資生堂入社3年目に初めてディレクターとして手掛けた作品です。
ルビー色の石けんに透過光をあて輝かせた上で、ナイフで真っぷたつに切る一瞬を真上から捉えたこのグラフィックは、商品を切ることによってその質感までが伝わってきます。「ホネケーキ以外はキレイに切れません」というキャッチコピーも印象的なこの雑誌広告は、社内からの「商品を切るなどあり得ない」という強い反対意見も乗り越え、広告賞を受賞するなど高い評価を受け、石岡瑛子が躍進するきっかけとなりました。
デザイナーとして「もっと世の中を攪拌できるような仕事」を目指した石岡瑛子は、後に「社会を変えるとまで言ったら大げさかもしれないけど、デザイナーも世の中が『おっ!?』と思うようなものを志さないとダメだと思う」と語っています。「枠を超えることに躊躇しない」という石岡瑛子の生涯変わらないデザインづくりへの姿勢は、デビュー作であるこの広告作品に既に表れているようです。
文/丸毛 敏行(資生堂 社会価値創造本部)