『花椿』夏号では、「Beauty Innovations」についての考えを深めるために、さまざまなフィールドで活躍する方に「あなたにとって美しい世界とは?」という問いを投げかけています。
Vol.1の韓国人アーティストのイ・ランに引き続き、映画『スケート・キッチン』に出演した、NYのガールズスケートクルーのメンバーであり、それぞれアーティスト活動も行う(写真左から)カブリーナ・アダムス、ジュールズ・ロレンゾ、ブレン・ロレンゾ、アジャニ・ラッセルにお話をお聞きしました。
ー日々過ごしているなかで、どんなときに「美しい瞬間」を感じますか?
アジャニ・ラッセル(以下、アジャニ):光が反射しているとき。アーティストとして光のインスタレーションの制作もしているので、日頃からいろんな影や光を探すことが多くて、光なら、何時間見ていても飽きない。今は、山の上にあるLAの芸術大学に通っているので、まわりに自然がたくさんあって、NYからそういう場所に行くと、ああすごく美しいなとも思うし、リフレッシュできるというのはあるよね。
ジュールス・ロレンゾ(以下、ジュールス):うん、自然のなかには美しさを感じるよね。NYは自然があんまりないし、たとえばセントラルパークに行っても、サイレンが聞こえてきたりして(笑)。自然に囲まれた静かなところに行くのもいいけど、私は美しい瞬間って、よく見ないとあまり気づかないような小さいところにあるような気もする。歩いていて、花が道端に咲いてたり、ストリートアートがあったり、そういうものに気づく、ちょっとした瞬間っていうのもいいものだなって。
ブレン・ロレンゾ(以下、ブレン) :そうだね。私は、バラエティに富んでいることに美しさを感じるかな。NYの人々を見ても、スタイルも全然違うし、建築もバラバラだし、道にはいろんな種類の壁画やグラフィティがある。NYは狭いようで実は広くて、いろんな街角を歩かないと見つけられない魅力がたくさんあって。だから、美しい瞬間には、歩いているだけで出会うことができると思う。
カブリーナ・アダムス(以下、カブリーナ):私の場合は、朝、部屋のブラインドが開いているどうかにもよって変わるんだけど(笑)、窓から差し込む太陽の光を浴びると、1日の始まりを美しいなと思う。あとは、どうやってマンハッタンに行くかによっても変わるんだけど、電車の窓から見えるスカイラインの風景も好き。でも、私がそういう日常の何でもないことをTweetしたり、ポストしたりすると、「こんなの大したことないよ!」とか、街のことをよく言わない人も結構いるんだよね。けど、いたくないならいなきゃいいと思うし、私は好きでここにいるしと思ってる。
ーNYという街を美しいと思いますか?
全員:うん、間違いなく。
ジュールス:NYって、ユニークだから。いろんな場所に行くけど、どこか似てるとか同じ雰囲気だとか、既視感を感じることがないんだよね。アメリカという国自体は多様性に欠けている場所が多いなかで、NYは多様性に富んでいて、いろんなカルチャーを体験できるところが素敵だなと思える。
ー美しい世界とはどんな場所だと思いますか?
カブリーナ :誰もが電気自動車に乗って、地球のことを思いやって、お互いに尊重し合える世界。
ジュールス:誰もが外出することを恐れない、たとえば、女性であるとか、ある種の特性から誰かが自分のことを傷つけるんじゃないかという不安を覚えることがない世界。誰もがプライベートなスペースを提供される、あらゆる人に開かれた世界っていうのかな。
ブレン:お金があまり重要でない世界。自分の国を離れざるを得ない人もたくさんいる中で、医療や住居が全ての人に提供され、固定観念や憎しみもなく、制限されずに一人ひとりがやりたいことができるような。
アジャニ:利己的な行動ではなく無償の行動をみんながするような、思いやりに溢れた、開かれた世界。それは環境にも社会にも政治にも当てはまることで、自己中心的ではなく、集合体としてもっと統一していくべきだと感じる。そのためには、みんなの愛情がもっと必要だと思う。
ー最後に、“美しい”ということばは、自分にとって何を意味しますか?
ジュールス:外側ではなく、内面を表すものかな。ものすごく美しい容姿だったとしても、性格がサイアクだったりしたら、その人は美しくないってことになるし。だから、何が人を輝かせるかはその人次第になってくるよね。
アジャニ:”美しい”、形容詞というよりも感じるもののような気がする。人だけじゃなくて、物に対しても抱く感情で、ただどう見えるかということだけが判断材料じゃない。たとえば、作品を見るときも、それが生み出されるに至った作り手の視点、考え、思いやりを含めて感じ取るから。
ブレン:美しさは、誰かの意見に基づいた社会的スタンダードということではなくて、もっとパーソナルで主観的なものだよね。あなたが何を選ぶかに基づいてるというか。アジャニがさっき言ったみたいに、人として心から何かを感じさせられたり、動かされたりするもの。光とか、ときめきとか、幸せとか。だから、何を美しいと感じるかは、人によって全く違うものになるんだと思う。
映画『スケート・キッチン』
“Skate Kitchen”とは、女性はキッチンにいるべきだという固定観念を打破すべく結成された、NYに実在する7名のガールズスケートクルー。映画『スケート・キッチン』(シネクイントほかで公開中)は、MIU MIUのプロジェクト「MIU MIU WOMEN'S TALES (女性たちの物語)」でクリスタル・モーゼルが監督した短編、『That One Day』(16)を長編化したもの。現実の彼女たちの日常や友情が、フィクションとして、きらきらと瑞々しく描き出される。クルーは、本作をきっかけに女優デビューすることとなった。
http://skatekitchen.jp/
©2017 Skate Girl Film LLC.
配給:パルコ