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空想ガストロノミー

L’hommage pour A.S

2020.02.03

イラスト・文/田中 麻記子

突然ですが、私の生まれは東京・御茶ノ水。
家の真横が、湯島聖堂という、
江戸時代元禄3年に徳川綱吉によって建てられた孔子廟でした。

都会だけれど、中は小さな森のようになっていて、
小さい頃の遊び場だった。
そこに生えているお花の蜜を吸ったり 
得体のしれない植物に興味津々だったり、、。
シロツメクサで冠を作ったり、
石の上に花を並べて薬草発表会?のようなことをして遊んだり。

大人になった今でも、食べることは勿論、ハーブや漢方、
スパイスには興味津々。
かつての記憶が今を形成しているのかな、と思うのです。

2020年最初の「空想ガストロノミー」は、
アーチスト諏訪綾子さんへのオマージュ。

敬愛する友人でもある彼女の生まれは能登半島。
海も山もある大自然の中で、
それこそ私の湯島聖堂の森の100倍くらい本格的で
バラエティに富んだバージョンで、
少女の諏訪綾子は「儀式」をしていたのではないか。
彼女の作品からはいつもその要素を感じていたのです。

圧倒的な美貌と、エッジのきいたコスチュームもお似合いの彼女だけれど、
私にはいつもその内面に存在する
「森の少女」の諏訪綾子さんばかりが見えている。
何事にも好奇心旺盛で目をキラキラさせながら、
オリジナルに世界を見ている少女。
そして私は、あの少女から生まれる、
「素敵な悪戯」のような作品世界のいちファン。

現在、資生堂ギャラリーで
「記憶の珍味」という展覧会が開催されていますが、
最初にそのタイトルを聞いた時、
森の少女がこれまで行ってきた儀式の媚薬が再調合され、
濃縮された滴(しずく)が熟成し、
それが「珍味」と名付けられた気がし、
とても楽しみにしていました。

良き芸術作品は、観たり聴いたり体験した後に、
世界が少し違ってみえたり、
新しい感覚を自分の中で呼び覚ましてくれたりする
効果があるものだと思いますが、
諏訪綾子さんの作品は、
味わったり香りを嗅いだりするものだから、
鼻孔や舌の血管ごしに新しい感覚がダイレクトに刺激してきて、
自分の一部となってしまうやや中毒性のある作品。

そんな少し危険な香りのするものを、
あの森の少女が生み出すというコントラストが、
私が魅力を感じている理由の一つではないかと思いました。

3月22日までに、是非確認しに行きましょう。

「記憶の珍味 諏訪綾子展 
Taste of Reminiscence Delicacies from Nature」
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/

GIFアニメ制作協力/植木 駿

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