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Collection

2018.02.09

東京コレクションのビューティー・キーワード<2> 

文/花椿編集室

写真/細倉 真弓

2018年春夏東京コレクションで見つけた、ワンポイントメイクアップの方法。今回はジェンダーレスなコレクションを打ち出すDRESSEDUNDRESSEDと、ブランド創設20周年の凱旋コレクションを行ったTOGAからご紹介。

DRESSEDUNDRESSED

今一度、赤リップ
モノトーンとヌーディーカラーを基調に、深いスリットの入ったランジェリードレスや軽やかな素材のトレンチコートなどを提案したDRESSEDUNDRESSED。全体はミニマルシックな趣だが、男性モデルはオーバーサイズめのトップスにボトムはショートパンツを合わせたり肌着のみだったりと肌の露出が図られたことでユニセックスな印象に。そして一方の女性モデルはダンディなスーツのセットアップやオーバーサイズのデニムジャケットなどをまとうことでマスキュリンな印象が強まり、時折、男女、女女、男男が二人ずつ、ほとんど同じルックで登場する演出は性差を明らかにしつつも、その差が個性に転じて結局性差があいまいになるような効果を生んだ。

モデルは一様にファンデーションを重ねたマットな肌。グロスも色もなし。均一化されることでむしろ、一人ひとりの個が際立つような演出だ。その中で一人、赤いルージュをまとった女性が登場するのだが、均質の静けさを破るように、その赤いルージュには力強いムードがあり、改めてその魅力を感じさせた。赤いルージュはトレンドレスなアイテムとして、日常でまといたいひとつ。

赤いリップは資生堂 ルージュ ルージュ(色番:RD312)を使用
メイクのチーフを務めた渋沢知美(資生堂ヘア&メーキャップ アーティスト)

引き算で強調する方法
現在はコレクション発表の場をロンドンに移しているTOGAがブランド設立20周年を迎え、国立新美術館を舞台に凱旋ショーを行った。メンズのテーラードジャケットをロングコートや袖をカットしたベスト風、クロップド丈にするなどアレンジを加えたトップスに、ハイウエストのゆったりしたパンツやプリーツのロングスカート、シアーな素材で抜け感を演出したパンツなどを合わせたスタイリングは、潔く、アダルトな印象を強調。ブルー、グレーの色調から徐々にチェックやアート作品のようなポルカドットなどのパターンが登場し、ギャザーの妙が効いたアシンメトリードレスや、ビニール素材のスカートなど実験的な要素と相まって、力強いスタイルを提案した。

その強いスタイリングにあわせるメイクは一見、ノーマルなナチュラルメイク風。しかしよくよく見ると、ナチュラルなムードの中で目元だけが自然にくっきりと強調されている。目元を強調するというと、一般的には目周りを過剰に作りこむようなイメージを思い浮かべるが、今回の方法はそのような“足し算の強調”ではない。むしろ目元にはほとんど何も施さずに目元以外の印象を“抑える”ことで、目の存在感を高めるという発想の転換がなされている。キーアイテムはルースパウダー。目の周りに丁寧に塗布することで、目元だけをくっきりと浮き上がらせるような効果を生む。強調したいパーツをさりげなく目立たせるこの方法は、ほかのパーツにも応用できそうだ。

キーアイテムはNARS ソフトベルベットルースパウダー ©NARS
メイクを手掛けたのはNARS インターナショナル リード メーキャップスタイリストの伊藤貞文氏 ©NARS
©NARS
©NARS
©NARS
バックステージより

細倉 真弓

写真家

東京/京都在住
触覚的な視覚を軸に、身体や性、人と人工物、有機物と無機物など、移り変わっていく境界線を写真と映像で扱う。立命館大学文学部、及び日本大学芸術学部写真学科卒業。写真集に「NEW SKIN」(2020年、MACK)、「Jubilee」(2017年、artbeat publishers)、「transparency is the new mystery」(2016年、MACK)など。
http://hosokuramayumi.com