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Collection

2017.07.12

東京コレクションレポート

文/花椿編集室

写真/細倉 真弓

中国、アメリカ、そして日本のミックスカルチャーを背景にもつデザイナー、VIVIANO SUE(ヴィヴィアンノ スー)が手掛けるブランド、HOUSE OF VIVIANO SUE。アバンギャルドを基調としながらも、その根底には東洋の花鳥風月といった豊かな自然感覚が息づいている。「PLUMAGE(羽)」をテーマに掲げた今季は、フェザーを用いたヘッドアクセサリーブランド、:IIMISA(イイミサ)とのコラボレーションコレクションを披露した。

「テーマの“PLUMAGE”ということばには束縛から解放されるという意味があります。自分を受けいれることで自信を得る。そして鳥のように自由になる。そのような物語を想定しました」と語るデザイナーのスー。極彩色のファーを全体のキーアクセントに、レースやウールなどの素材のミックス感やアシンメトリーなシルエット、スリットを入れたニットドレスやレース地を表面にあしらったダウンジャケットなど、さまざまなコントラストの交錯に“自由”というキーワードを表している。

スーのコレクションをいっそう強く、神秘的なムードで包んだのは:IIMISAのヘッドドレス。デザイナーの伊井美沙は、西洋画に描かれる一角獣のように、この世のものではないような怪しい、畏怖の念に満ちた生物をイメージしたそう。自ら染色した羽を編み込んで作るというヘッドドレスは、リアルフェザーを用いた手仕事ゆえに、有機物がもつ生命の気配をたたえている。

ダークロマンティックなムードを盛り上げたヘア・メイクアップは、徹底的なショーメイクアップに徹した。メイクアップのチーフを務めた大久保紀子は、ミステリアスな印象を演出するため、ネットマスクを中心に影のようなフェイスを作り上げた。ポイントは黒を広げたアイホール。よく見ると、黒の中にかすかに赤や紫などの色味を忍ばせている。

プレイリストのベースで整えた後、アイホール全体に黒を敷き、アクセントに色味を足す
大久保紀子・資生堂トップヘア&メイクアップアーティスト

原田忠がチーフを務めたヘアは、中心となるヘッドドレスを引き立てるべく、シンプルなまとめ髪に仕上げた。均一になでつけたスリークバックとローポニーですっきりとまとめ、ヘッドドレスの装着をスムースに促す。

原田忠・資生堂トップヘア&メイクアップアーティスト

羽毛と、そこから発した自由のイメージ。フェザーを中心に、さまざまな要素をミックスすることで、ファッションは自由であること、服を着るあなた自身も自由であることを表現したコレクション。その気概は今年の秋冬シーズンのファッショントレンドにとって特に大事な要素である。

細倉 真弓

写真家

東京/京都在住
触覚的な視覚を軸に、身体や性、人と人工物、有機物と無機物など、移り変わっていく境界線を写真と映像で扱う。立命館大学文学部、及び日本大学芸術学部写真学科卒業。写真集に「NEW SKIN」(2020年、MACK)、「Jubilee」(2017年、artbeat publishers)、「transparency is the new mystery」(2016年、MACK)など。
http://hosokuramayumi.com