およそ1時間のショーが始まった。若手ファッションデザイナーの登竜門として多くのデザイナーを輩出してきた「TOKYO新人デザイナーファッション大賞」。そのアマチュア部門審査結果発表、そしてプロ部門デザイナー31名のデザイナーのうち、HELMAPH & RODITUS 、LUCIOLE_JEAN PIERRE、meanswhile 、NAPE_、RIEKA INOUE GNU、の5名のデザイナーブランドが2017春夏コレクションを発表した。
アマチュア部門の大賞に選ばれたのは、上田康子服飾専門学校 PHAN THI CAM TU(ファン ティ カム トゥ)。留学生として日本でファッションを学ぶベトナム人の彼女の受賞作のテーマは「KINTSUGI」だった。「KINTSUGI=金継ぎ」は、破損してしまった器などを漆で接着し、金粉などで装飾し、修復するという日本の伝統技術。壊れたものを捨てるのではなく、繋ぎ合わせて新しい価値を息吹くという日本の精神“侘び寂び”にも通じる日本独自の文化である。 これにインスパイアされて作られた受賞作品は、欠点を美しさとして捉え、美しさの価値をそれを見る人の心に問う、日本の美の感覚を救い上げようとしたものだったように思う。
また、ジョイント形式でランウェイを行ったプロ部門。中でもmeanswhileは、6月に行われたプロ部門の最終審査会で最高得点を得て、東京都知事賞を受賞している。
「日常着である以上、服は衣装ではなく道具である」というブランドコンセプトにあるように、機能を追求したからこそ生まれるデザインが特徴的で、今シーズンのショーでも、次世代メンズを牽引するブランドとして、都会的でスタイリッシュなアウトドアプロダクトを展開した。
冒頭にも書いたように今回は、コレクションとしては1時間と長く、登場したコレクション数も多い。アマチュア部門入賞25作品、プロ部門5ブランドそれぞれ7体、この全てのヘア&メークを担当したのは20名の「SABFA」のメンバー。「SABFA」は、美容師免許をもつ人を対象とした、プロのヘア&メーキャップアーティストを育成するスクールだ。その今年度の生徒が、SHISEIDOヘア&メーキャップアーティストでありSABFA講師を務める、入江広憲(SHISEIDO)、新城輝昌(SHISEIDO)のアドバイスを受けながら、ヘア&メークを完成させていった。 ヘア&メークのクリエーションは、作品ごとに変えていく必要があるため、ナチュラルをベースとしている。肌は、クリーンで軽いテクスチャーに仕上げつつ、作品の世界観に合わせた要素を、それぞれポイントメークで表現した。
日本のみならず世界の若手デザイナーを対象に行われる、同ファッションデザインコンテスト。アマチュア部門のショーでは、デザイナーの学生とSABFAの学生が作品を一緒に作り上げ、さらに、それをプロデザイナーのコレクションと一緒に披露することができる。ファッション界の未来を担うデザイナーを目指す彼らが鼓舞されることはファッション業界、延いてはクリエイティブを盛り上げることにつながっていく。若き才能を育てる必然性は言わずもがなである。
(花椿編集室 渡部彩)