喫茶店と同じくらい好きなものがある。それは、猫。生まれた頃から家に猫がいた、いまも猫と一緒に暮らしている。そんな愛してやまない2つが共存する場所、新宿の「カフェ アルル」。
ここには2匹の住込み猫店員、次郎長と石松がいる。彼らは2代目で、先代には五右衛門という住込み猫店員がいた。彼らは、誰にでも優しく、しかし猫らしい自由さは残したまま、ゆるりとおもてなしをしている。
猫がぎっしり詰まったTシャツを着て意気込み満々に向かう土曜日の午後、店内は満席。老若男女のお客さんが集まる喫茶店、週末の新宿は特にその色が強い。漏れ聞こえてくるのは、昨日の話、未来の話、行ったことのないあの街の話……。
昨日と今日が混在しているような、不思議な空気感で溢れている。しかし、ふらっと次郎長や石松がお客さんの隣に座ると少し強面なあの人も、昨夜の飲み会の愚痴を言っていたあの子も、途端に顔がほころぶ。みんなやっぱり猫が好きなようだ。
空腹の私は、ナポリタンを注文した。ナポリタンはよく食べる喫茶メニューのひとつ。ここはいつでもサラダとスープ、飲み物もついてくるから定食気分。入り口にある猫とナポリタン(ニャポリタン)の置物を見るとつい、ナポリタンを注文してしまうのだ。
ナポリタンを食べ終え、紅茶をすすっているとふらりと赤いほっかむりをした石松がやってきた。石松はよく被り物をしている。今日はシンプルに赤ですね。
私も赤い靴下を履いてきたのでお揃いです。膝の上で昼寝をしようとする石松、突然好きな人に手を繋がれたようなどきどきを抱えながら、私はまたそーっと紅茶をすする。
そういえば、次郎長はどこへ? 店の外を覗くとのんびり座っていた。これが本当の看板猫。次郎長はマスターと一緒に近所をよく散歩する。今日は私も少し散歩をさせてもらった。グイグイと突き進む次郎長についていくが、私が次郎長に散歩させられているのでは……?
頭の毛がおにぎりの海苔のようでかわいい次郎長。彼もまた赤い襟巻。今日は赤い靴下を履いて、赤いソールのMM6のサンダルを履いてきて正解。本日のドレスコードは赤だったみたいでほっとしている。
おしゃべりで優しいマスターと、2匹の住込み猫店員たち、いつもここに来る時はかっこつけた自分ではいられなくなる。実家のような、安心感のあるここは私の里帰りできる場所なのかもしれない。
帰りがけ、マスターがひらひらと手を振りながら見送ってくれた様子を思い返しながら、また早く帰りたいと思う。
住所:東京都新宿区新宿5-10-8 1F
TEL:03-3356-0003
営業時間:[月~土]11:30~22:00
定休日:日、正月