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東京喫茶部

東京喫茶部「コーヒーロン」

2017.06.16

文/小谷実由

写真/島田大介

季節はもうすっかり夏なのだろうか、朝だというのに真上からジリジリと差すような眩しい太陽、梅雨を飛び越えて夏が始まったような朝。そんなクラクラする天気から逃げるように飛び込んだのは、螺旋階段が印象的でどこか隠れ家的な雰囲気の四ッ谷の「コーヒーロン」。

ここのBGMはいつもビートルズオンリー。理由はいつか聞いてみたいと思っているところ。今日はどの曲がかかるだろう、私の好きなあの曲はかかるだろうか。

今日のお店にはママさんだけ。今日はたまごサンドを食べに来たのだったけど、たまごサンドはマスターしか作れない。良い機会と思い、はじめて食べるチーズトーストをお願いした。



2枚のトーストにサンドされて現れた少し小ぶりで分厚い真四角なトースト、ボックスのようでかわいい。ママさんが作るトーストも格別であった。優しくて笑顔のかわいいママさんの人柄が表れているような、ほっとする味。 



しかし、チーズトーストって朝から食べていいのだろうか、朝からホットケーキが出てきた子供の頃の朝ごはんを思い出す。今ではこうして好きな店に朝ごはんを食べに来れるのだ、なんだか少し大人になった気分である。そんなとき、マスターがふらりと戻ってきた……!



お腹はもうすでに満たされている、が、やはりたまごサンドが、たまごサンドについてくるミニトマトにまで、恋しい気持ちを抱いていたのは確かだった。そうこうしているうちにたまごサンドもやっぱりください。と、つぶやいていた。



恋をすると周りが見えない。今の私はお腹の中の容量だって見えない。こういうときだけデザートは別腹なんてフェミニンな言葉が口からこぼれ落ちそうになる。

運ばれてきたのはやさしい黄色のたまごサンド、少し半熟で適度な薄さのそれは、トランプをしている最中でも食べれるようにと発明されたサンドウィッチを頷かせるようなコンパクトでかわいい形。シャイだけど芯の強そうなマスターのこだわりが詰まった、でも優しくてシンプルな味。

ロンのソファは懐かしくて切ない深い赤、この赤に負けないようにと悩みに悩んで選んで着た今日の服は、少しおてんばなグリーンのサマーニット。

偶然にも出揃った、喫茶店で繰り広げられる健康な3色たちに、寄り添うのは延々と流れるビートルズ。でも、私の好きなあの曲は流れなかった。

コーヒーロン
住所:東京都新宿区四谷1-2 ロンビル 1-2F


TEL:03-3341-1091

営業時間:[月~金]9:00~19:45(L.O. 19:15)

定休日:土、日、祝

クリエイターの紹介

小谷実由

モデル

1991年東京生まれ。ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、様々な作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。
https://www.instagram.com/omiyuno

島田大介

映像作家/写真家

映像ディレクターとしてキャリアをスタート。数々のCM やMUSICVIDEO などを演出し、カンヌ広告祭をはじめ国内外数々の賞を受賞する。2018 年、代表を務めた映像制作会社コトリフィルムを解散。 現在は作家としての制作を中心に活動中。

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