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Rocky’s report from Shanghai

Vol.6 上海でオススメの街角はどこ?

2020.12.21

文/令狐磊 Rocky Liang

翻訳/サウザー美帆

『花椿』2020年夏・秋号より、中国語版を刊行し、中国国内15都市にて配布しています。『花椿』中国語版の制作にご協力いただいている、上海のクリエイター集団「文化力研究所」の代表で編集者の令狐磊(ロッキー・リアン)さんが、中国でいま注目のアートやカルチャーについてをマンスリーのレポートでお届けします!

 

陽北路と新楽路の交差点に建つロシア正教の教会 Photo by Tian Fangfang

『花椿』中国語版が2020年春に創刊され、より多くの中国人が銀座への造詣を深めました。特に交差点にいる4人のモデルを空撮した写真は、銀座の交差点が僕にとって最初の東京の記憶だったことを思い出させました。クリーンな街並み、銀色に輝くネオン、老舗百貨店、近未来的な商業施設。特に数寄屋橋のX字型の横断歩道は鮮やかに目に映り、「これこそワールドクラスの交差点!」と思ったものです。
 銀座や渋谷の交差点は規則正しい交通や周辺の建築物に加え、信号機の制御に伴う歩行者の流れもリズミカルで美しい景観です。そして不意に思いました。上海が世界に誇れる交差点はどこだろう?と。

 

 流動人口の多さで言えば、南京東路(ナンジンドンルー)と河南中路(フーナンジョンルー)の交差点はまさに渋谷。大丸百貨店、HUAWEIビル、アップルの旗艦店が並んでいます。休日には過剰な人の流れを制御すべく、警官と兵士が群衆を分割するかの如く交通整理をしているのが印象的です。

南京東路と河南中路の交差点

 銀座の数寄屋橋のようなX字型といえば、淮海中路(ワイハイジョンルー)と黄陂南路(ファンピーナンルー)の交差点。四つの角にはアップル、ティファニー、カルティエ、新天地広場があり、上海を代表する商業エリアとなっています。

 上海には黄浦江(ファンプージャン)という川沿いの地形と歴史的な理由から5つや6つの道路が交わる交差点がいくつもあります。最近人気の「武康大楼」のある交差点では、淮海中路、天平路(ティエンビンルー)、余慶路(ユーチンルー)、興国路(ジングオルー)、武康路(ウーカンルー)が複雑に入り組み、初心者のドライバーはよく道を間違えてしまいます。

武康路のシンボルマーク「武康大楼」 Photo by Tian Fangfang

 南京西路(ナンチンシールー)と石門一路(シメンイールー)の角には「STARBUCKS Reserve ROASTERY」ができて以来、インターナショナルな雰囲気になりました。「Lisson Gallery」は、ジュリアン・オピーのスクリーンアニメによる作品をこの街角に設置。「世界の主要都市でよく見られるこれらのイメージは、表象の性質や知覚表現を探る作家自身のこだわりを反映しています」と、ギャラリーのオーナー。3つのキャラクターはロンドンやニューヨークの街でも休みなく歩いているかもしれませんが、今ここ上海の交差点でも多くの人の目を引きつけています。

南京西路と石門一路の角の「STARBUCKS Reserve ROSTERY」
ジュリアン・オピーのスクリーンアニメによる作品も設置されている

 僕が最近一番好きなのは襄陽北路(シャンヤンベイルー)と新楽路(シンラールー)の交差点。新聞をテーマにしたカフェ「PARAS」はテーブルがなく、古新聞を積み上げたスツールだけ。コーヒーを飲む人に最新の「New York Times」「Financial Times」や地元の新聞を提供しています。隣は噴水のあるフランス式の公園。斜め向かいには1930年代に上海に住んでいたロシア人が建てた古いロシア正教の教会があり、カフェの外はパリのような雰囲気です。

 先日ここでコーヒーを飲んでいたとき、驚いたことに、交差点の上の電線をリスが走り、道路を横切って電柱の後ろに消えていきました。上海に残る古い電線が、都会の野生動物たちにとっては信号など関係なくマイペースで道路を横断するのに理想的だとは想像もしていませんでした。

カフェ「PARAS」

『アメリカ大都市の死と生』を書いたジェイン・ジェイコブズによると、よい都市には自発的で自由な“バレエのステップ”があるそうです。それは、一人ひとりの踊り手が持ち前のパートを担い、それぞれの担い手たちがお互いに共鳴し合い、秩序だった全体を構成するような複雑かつ即興的なバレエのような生活リズムを持つ、そんな多様な街路文化を指しています。また、長く閉塞感のある大通りではなく、短い通りが小刻みに続き、新旧の建物がバランスよく融合している、とも書いています。

 現在、都市再生の大きな変化を迎えている上海の各地区では、それらの要素が街角に浮き上がり、人々に再認識されるのを待っているようにも見えます。あるいは、あの小さなリスのように、すぐに視界から消えてしまうのかもしれませんが。

クリエイターの紹介

令狐磊 Rocky Liang

クリエイティブディレクター/編集者

『生活月刊LIFE MAGAZINE』など数々のカルチャー誌の編集長を歴任。現在は上海『衡山・和集』『方所 上海浦東店』など文化発信地的な書店のクリエイティブディレクターも務める。同時に文化とビジネスの新しいスタイルの融合を目指す文化力研究所の所長として『花椿』中国版の制作を指揮するなど多方面で活躍中。

サウザー美帆

編集者/翻訳者

元『エスクァイア日本版』副編集長。上海在住を経て、現在は東京を拠点に日中両国のメディアの仕事に従事。著書に日本の伝統工芸を紹介する『誠実的手芸(誠実な手仕事)』『造物的温度(ものづくりの温度)』(中国語、上海浦睿文化発行)。京都青艸堂の共同設立者として中国向け書籍の出版制作にも携わる。

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