Rocky’s report from Shanghai
2022.03.24
Vol.21 Blue Bottle Coffeeがついに上海に上陸
文/令狐磊 Rocky Liang
翻訳/サウザー美帆
前々回のコラムでも少し触れたBlue Bottle Coffeeの中国大陸初出店。2月24日のプレオープンに参加できた僕はラッキーでした。翌日の正式オープン日には、なんと早朝6時から並ぶ人がいて、最大5時間待ちだったそうです!
Blue Bottle Coffeeの日本1号店は、銀座や表参道のような商業地区ではない清澄白河にオープンし、素朴なコミュニティといった雰囲気を漂わせていました。上海1号店は蘇州河北岸の新ビジネスエリアにあり、建物は1926年竣工のかつての製粉所の職員宿舎で、現在は歴史的保存建築に指定されています。約100年の歴史を持つ、上海の典型的な赤とグレーのレンガ造りの古建築に、アメリカ・オークランド発の青いボトルが掛けられました。
数年前、清澄白河のBlue Bottle Coffeeを訪れたとき、僕はそのユニークなロケーションに、創業者ジェームス・フリーマンのコミュニティを重視する姿勢を感じました。だから彼が中国だったらどこに店を開くのかと楽しみにしていました。このエリアは上海駅周辺の再開発の伴い、ワールドクラスの広告代理店の中国本社ビルなども建ち、そこで働くクリエイティブな人たちが顧客になるのでしょう。
2016年頃から上海ではコーヒー熱が高まり、今では世界で最もカフェの多い都市になりました(2021年末の統計によると上海6,913店、東京3,826店)。中国ではStarbucksに始まり、SNS映えのする韓国風カフェなどの流行がコーヒー文化を盛り上げてきましたが、Blue Bottle Coffeeのような豆の品質など細部にこだわったクラフトコーヒーがより支持される傾向にあります。独自の焙煎とブレンドによるコーヒーの複合的な味覚体験は、中国人が岩茶や紅茶、烏龍茶などの焙じ茶の豊かな味わいを追求することと共通しているからかもしれません。
とはいえ中国市場にはすでにさまざまなカフェブランドが林立し過当競争状態とも言えます。代表的なのは、多元的なライフスタイルを楽しむ人々に焦点を当てたSeesaw、ご近所感覚を打ち出しているManner、デザインやファッションが好きな人たちにフォーカスする%マークでおなじみの%Arabicaなどです。そんな中で、サードウェーブコーヒーの代表と言われているBlue Bottle Coffeeは中国ではどんな存在になるのでしょうか?
長蛇の列ができる前日に上海1号店を体験することができた僕が多くの友人から聞かれたのは「美味しかった? 行く価値ある?」でしたが、今やカフェは、単にコーヒーが美味しいだけではダメだと実感しました。まず、Blue Bottle Coffeeはバリスタが空間の主人公。客はバリスタのプロ意識や作法を鑑賞することができます。
第二に、Blue Bottle Coffeeの美学はシンプル・イズ・ベスト。上海1号店のデザイナーは長坂常で、ビンテージチェアなどがセンスよく配され、コーヒーライフの美意識を高いレベルに引き上げています。
第三に、親しい隣人のように顧客とコミュニケーションできるバリスタの能力、また地域の食文化を尊重したペアリング商品の提供なども重要。中国では蘇州の鶏頭米(オニバスの実)を組み合わせたラテ、油条(中国式揚げパン)とコーヒーのセットなどをよく見ますが、Blue Bottle Coffeeでは上海のローカルスナックを取り入れています。
また、1945年創業のFAEMA社の伝統的な美しいエスプレッソマシンが置かれています。これは中国のコーヒー信望者たちの心をくすぐるのではないでしょうか。
都市生活の産物であるカフェ文化。Blue Bottle Coffeeの上海進出は、中国クラフトコーヒー市場の激しい競争をさらにヒートアップさせそうです。