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今月の詩

2020.05.18

まぶしい 

詩/遠藤葉月

戻りたい瞬間を持っている人はまぶしい
まぶしい人は光だから
頭を撫でてもらっても
抱きしめてもらっても
すり抜けて、さす
私の向こう側で笑う
瞬間にしがみついて笑う
それは私の希望で、まぶしい
「まぶしいことは正しいんだよ」
抱きしめるみたいに殴る

間違っていてもいいです
私にはしがみつくものなんてありませんから

 

選評/高橋源一郎

なんだか、「新型コロナウィルス」の大流行から、世界がぜんぶちがって見えるようなってきた。でも、しょうがない。世界が変わればぼくたち自身も変わるし、世界の見え方だって変わってきてしまうんだ。以前読んだときは、この「まぶしい」は、とても明るい詩に見えた。5月の光みたいに。でも、いま読むと、なんだか暗い。もしかしたら、ぼくのせいでも、作者の遠藤さんのせいでもなく、世界が変わってしまったからなのかもしれない。「まぶしいことは正しいんだよ」。うん、確かに、そう思っていた。でも、いまは、そういわれても、そうなのかなあ、とためらってしまう。「抱きしめるみたいに殴」らないでほしい。そんな気もしてくる。ヤバいな、なんか。だから、逆に、いまひりひりするぐらい、共感するのは、最後の「間違っていてもいいんです/私にはしがみつくものなんてありませんから」のパートなんだよね。