森岡書店代表の森岡督行さんが、銀座の過去、現在、そして未来をつなげる新しい物語です。時の人々が集い、数々のドラマが生まれた銀座には、今もその香りが漂っています。1964年頃に銀座を撮り続けていた写真家・伊藤昊さんの写真とともに、銀座の街を旅してみましょう。今回は銀座の生態系にまつわるお話です。
現代銀座考 : XXIII 銀座生態系ツアー
去る3月11日、銀座に生きる植物を見てまわる、「銀座生態系ツアー」を行いました。銀座といえば都心のイメージがありますが、どのような生態系が広がっているのでしょうか。企画してくださった、資生堂 クリエイティブ本部の堀景祐さんのナビをもとに振り返ってみたいと思います。
銀座7丁目の資生堂銀座ビルに集合した私たちは、まず同ビル屋上の「資生の庭」(*1)に向かいました。ここには、屋上緑化の観点から、化粧コットンの材料になる綿の木をはじめ、オリーブやサトウキビなど約100種類の植物が生育しています。ちょうど甘夏が大きく実っていたので、手を伸ばして採って、皮をむいて食べてみると……。甘夏独特の苦味が口のなかに広がり、本場の甘夏のよう。銀座の甘夏もおいしいことがわかりました。
次に私たちが向かったのは花椿通り。中央通りとの交差点に8本の椿が植えられています。この交差点は、何度も行き来していたはずなのにまったく気がつきませんでした。じつは8本の椿は、島根県出雲市から贈られたもの。もともとこのあたりが出雲町という地名で、そのつながりからといいます。
花椿通りの東側を歩いていると、路肩に、ヤマゴボウが自生していました。なんとこのヤマゴボウは猛毒を持っています。もし食べたらどうなるのか。好奇心から、一瞬、口にしてしまいそうになりましたが、堀さんに止められました。もし歯止めが効かなかったら聖路加国際病院に救急搬送されたかもしれません。
花椿通りのつきあたりの昭和通りには、いちょうの樹が並んでいます。秋には、もちろん、銀杏が実り、ふつうに食べられるとのこと。今年の秋にほお張ってみたいです。銀座の銀杏。名前からして売れそうな……。
昭和通りを左折して、交詢社通りに入ると、楓の樹が並びます。なぜ、楓なのかというと、交詢社を主宰した福沢諭吉の家紋が楓だったからという説があるのだとか。
交詢社通りを進んで、並木通りに戻ってきました。西洋菩提樹が、ひときわ綺麗に並びます。私には、並木通りを歩行者天国にしたい、という夢があります。きっと今とは別の魅力が出るはず。どうしたら実現できるのか。もし私が中央区長選挙に出馬するなら、街頭演説に立って、一人ひとりの方に、意見を聞いてもらいたいです。
晴海通りを左折して数寄屋橋の泰明小学校のほうに向かうと、風に揺れる、銀座のシンボルの柳が見えてきました。柳の枝の流れるような曲線が、たおやかさを感じさせます。(「現代銀座考」第2回をご参照ください)。
4丁目交差点の方に歩いていると、和光の前で、ちょうど東日本大震災の時報がなりました。2011年3月11日14時46分。あれから10年。参加者で合掌。
中央通りこそ、いつも歩いているはずなのに、街路樹については何も知りません。東京オリンピックが開催される7月に花が咲くという理由で、現在は、桂が植えられていました。路肩の植え込みには、ディルなどのハーブも育っていて、おいしそう。
堀さんは「自然の山の1haより銀座のほうが、樹種の種類が多い説がある」と言います。確かに、このほかに、GINZA SIXや歌舞伎座などにも屋上庭園があり、多種多様な植物が生育している。そう考えると、銀座全体が植物園になっているというビジョンを共有できました。
尚、堀さんは、今回のツアーの見解をはじめ、これまで調査してきた銀座の生態系を、資生堂銀座ビルのウインドウに立体的な“銀座生態図”(*2)として可視化しています。ぜひこの機会に、銀座の生態系をご覧ください。きっと銀座がいつもと違って見えてきます。
*一般公開はしていない。
*2 銀座生態図/資生堂銀座ビルの1階のSHISEIDO WINDOW ARTとして3月29日(月)にスタートした。季節によって展示内容も変わっていく予定。
中央区銀座7-5-5
銀座生態図の詳細はこちら。