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Column

2021.11.04

BEAUTY MOMENTS with SHISEIDO Vol.2 Behind Story

Hair Stylist, Head Prop Artist / Nori Takabayashi

今回の「BEAUTY MOMENTS with SHISEIDO Vol.2」で、ひと際、目を引くマスク。このマスクを制作したのは、2009から10年あまりパリを拠点に、日仏を行き来しながらファッションの第一線でヘアスタイリストとして活躍するNori Takabayashi氏です。パリでは、個展を開催するなどかねてよりアート作品の制作にも力を入れてきました。「BEAUTY MOMENTS with SHISEIDO」撮影の合間、モデルのヘアをスタイリングするNori氏にそのマスク作品の制作についてお話を伺いました。

『花椿』2021年秋冬号(No.829)「BEAUTY MOMENTS with SHISEIDO Vol.2」より
Photography / Yuki Kumagai
Styling / Tomoko Kojima
Model / Miro
Hair and Mask / Nori Takabayashi (YARD)
Makeup / Tomomi Shibusawa (SHISEIDO)
Dress / AURALEE
Back / BACKGROUNDS FACTORY

海での出会い

2020年。Nori Takabayashi氏は、未曾有のパンデミックのなか、拠点をフランスから日本に移し、千葉の海に近い場所に自宅を構えました。

目まぐるしく変わる毎日のなかで、近くの浜で散歩していたNori氏の目にふと飛び込んできたのは、波打ち際に打ち上げられたプラスチックの“漂流物”でした。

「なんだろう、と思って足を止めました。いわゆる“ゴミ”だったんですけれど、そこに美しさや儚さを感じ創作意欲を掻き立てられました」

そこから、浜辺に打ち上げられた漂流物を組み合わせてのNori氏のオリジナルマスク制作が始まります。

「正直なところ、サステナビリティやアップサイクルといった“環境保全“を意識して制作を始めたわけではなかったんです。単純に、自分には漂流物がキレイに思えたから(笑)。しかし、こうして制作をはじめて意識してみると、海洋プラスチックの多さにはとても驚いていますし、とても深刻な問題のひとつだと実感しています」とNori氏。

“マスク”を通じて見える“本質”

「もともと、“マスク”というものに興味があったんです。“マスク”をつけることで表情が見えなくなる。表情が見えない。そのことによって、逆に、その人の“本質”が見えてくるのではないだろうか...その奥深さに気づいて以来、いろいろな素材でマスクを制作しては、個人活動として作品撮りをしていました」

Nori Takabayashi氏の個人活動作品(Hair & Mask)
Photography / Satoru Takayanagi
Styling / Kanako Sugiura
Model / TOKO
Nori Takabayashi氏の個人活動作品(Hair & Mask)
Photography / Satoru Takayanagi
Styling / Kanako Sugiura
Makeup / UDA(mekashi project)
Model / Miyako Koda

海に足を運んでは、漂流物のピースを集める。地道に集める。

自宅に戻り、洗浄し、そして、マスクのピースとして使えるか、色や質感などを見極めながら、選別していきました。

「とにかく、ひたすら地道に集めていく感じですね」。子供が宝物を集めるように、瞳を輝かせNori氏は語ります。

Mask by Nori Takabayashi
Mask by Nori Takabayashi
Mask by Nori Takabayashi
Mask by Nori Takabayashi
Mask by Nori Takabayashi

拡散するエネルギー

Nori氏のマスクは、その素材が漂流物とは思えないほどに、豊かな表情を見せる。作品の発表の場であるインスタグラムThe Transient Beauty
では、黄、黒、赤、白と、色ごとにまとめられたビジュアルが並びます。間近に見ると、それは、プラスチックという人工的な素材であるにもかかわらず、まるで「生きている」ようなエネルギーを醸し出すのです。

「もともと有機物であったプラスチックが、時間をかけてこの浜辺に流れ着き、その経過のなかで、もとの有機物に戻ろうとしているのに戻れない…そんなゴミたちが発するエネルギーなのかもしれませんね。ただ、僕にとっては、ゴミではないんですが(笑)」と、海辺で宝物を探す手は、手際よくモデルのヘアをすっきり整えていきます。

浜辺での豊かな宝探しの時間が、Nori氏の健康的で健やかな表情に映し出されているよう。

Nori氏のに胸にあるのは、マスクへの興味と同様、「本質を見極めたい」という気持ち。廃棄物を廃棄物と見るフィルターも要らない。想像力は海を越え、水平線の先の世界へと広がります。

Nori氏のクリエイティビティの源泉となる海
Photography / Nori Takabayashi

NORI TAKABAYASHI
ヘアスタイリスト、ヘッドプロップアーティスト
2009年からパリを拠点にエディトリアル、ファッション、広告等で活躍。
2020年に帰国。
古来の結びをテーマにヘアで表現した「MUSUBI」、海の漂流物で表現す「The Transient Beauty」それぞれのシリーズでアート作品を発表。

Nori Takabayashi氏のインスタグラム
noritakabayashi
Nori Takabayashi氏の作品を公開するインスタグラム
The Transient Beauty