レディー・ガガやEXILEのライブ衣装、実写版映画「ルパン三世」、宮里亜門の舞台の衣装製作ど国内外で活躍し、2017秋冬のパリ・オートクチュールコレクションに日本人としては12年ぶりに参加したデザイナー中里唯馬。東京コレクションでは、パリで発表した「UNKNOWN(未知なるもの)」をテーマにした「YUIMANAKAZATO」のルックをインスタレーション形式で発表した。
近未来的な空間に佇んだ、ホログラム素材の衣服を纏ったモデルは、3Dプリンタでつくった人工的な手を携え、頭を伸ばしたようなヘア、全身のビニールのような光沢などアバタ―を思わせる。円柱状にカーブしたホノグラムのカプセルの中に立ち、ゆっくりと回転する様子は、まるで浮遊しているかのよう。
ホノグラムは、ブランド設立当初から使い続けているという特殊素材。アイスランドで撮影したオーロラの写真を素材に転写し、カッティングプロッタで細かく切り、ひとつひとつ折り紙のように折って完成する。そのパーツは、一切ミシンを使わず繋がれており、すべてハンドメイドでつくられているという。このテクノロジーと人の手仕事の融合が幻想的な空間を作りあげていた。
西村礼美が手掛けたメーキャップは、肌やヘアにラメを施し、光のプリズムが幻想的に煌いていた。ウェアと相まって、異世界と人間の融合を感じさせる。ヘアを担当した谷口丈児(SHISEIDO)によると、ヘアは顔との境目がなくなるくらいに光沢感を出し、モデルによって頭の長さのバランスも変えているそう。人工物のような質感と極力シンプルなシェイプが際立つ。
3Dプリンタやカッティングプロッタの最新テクノロジーを取り入れていたコレクション。これから先、テクノロジーを駆使すれば、人の体をスキャンしてデータ化し、さらに3Dプリンタで服に仕上げることも可能ではないかと中里氏は考える。オートクチュールのように、テクノロジーによって一人ひとりに合わせたオーダーメイドの一点物の服が生まれるのだ。そんな未来のクリエーションを感じさせるショーだった。
(花椿編集室 渡部彩)