Rocky’s report from Shanghai
2023.01.25
Vol.31 コロナ後の上海のおすすめスポット
文/令狐磊 Rocky Liang
翻訳/サウザー美帆
中国はゼロコロナ政策が終わり、多くの外国人が上海を再訪するときが、きっともうすぐやってきます。そのときのために、この3年間で登場した上海の新しいスポットを案内しておきたいと思います。
まず蘇州河界隈が大きく変わっています。必見はイギリスの建築家トーマス・ヘザーウィックの設計による複合施設「1000 Trees」。昨年、元工業用地のウォーターフロントに現れたこの千鳥格子状にピクセル化された建築物は、1,000本以上の樹木が建築を覆うように配置されています。
その東側には上海の建築事務所KokaiStudiosによる「上海蘇河湾万象天地」も昨年末に完成。“都市の渓谷”とも称されるこの施設は、6万平方メートルの商業エリアと4.2万平方メートルの都市緑地公園、1884年に建てられた江南殿堂式建築の「天後宮」、1930年代に建てられた石庫門建築群を保存復元した「慎余里」で構成されています。
なかでも香港のクリエイティブスタジオAllRightsReservedとドイツのアーティスト集団Inges Ideeが共同で制作した2つのオブジェに注目。ひとつは高さが3階建てのビルほどあり、2階層をまたいでいる足の長い男の子。もうひとつは2階層にまたいで触れ合う象の親子。どちらも地上の緑地と地下の商業空間のつながりを強調しています。
オールド上海の象徴的なストリートでもある衡山路は昨年100周年記念を迎えました。オールドホテルの「衡山賓館」は現在ファサードの修復中。年内にリノベーションが完成予定。
パリのリヴォリ通りの建物のような連続アーチのデザインが美しい「衡山路8号」は、2021年5月から修復が始まりました。1920年代に建てられた庭園と給水塔という2つの歴史的建造物と特色ある現代建築からなり、最近話題のインターナショナルスーパーマーケット「JOYE&SAM」やイタリアンジェラート店、カフェ、ワインライブラリー、ベーカリー、レストランやバーなどが併設されています。
衡山路に連なる東平路は、以前はレストランストリートとして知られていましたが、2年にわたる改修を経て、中国本土初の「Aēsop」「lululemon」の路面店が登場。以前から人気のブティックや予約制音楽バーなどとともに、ストリート全体に優雅な雰囲気をもたらしています。
上海で最も古い地区でもある黄浦区では、1918年竣工の歴史的建造物「沙美大楼」をリノベーションした複合施設が2021年秋にオープン。厳かなバロック式建築の内部には、僕が最もおすすめするホテルのひとつである「Z HOTEL」のほか、雲南料理店、ビストロ、アートギャラリーなどが入っており、外灘の夜景が見えるルーフトップもあります。地下のレストラン「DECK」もよい雰囲気です。
そして、ここ数年の上海の最大の変化といえば、黄浦江沿いの再開発。自転車道と遊歩道の拡大によって、上海は全長40kmを超える世界で最も長いリバーフロントトレイルを持つ都市になりました。
それにともない、前バンド、北バンドといった新しいエリアも誕生。河岸文化を彩る龍美術館、西海岸美術館、浦東美術館、芸倉美術館などに加え、昨年末にフランスの建築家ジャン・ヌーヴェル設計による星美術館が新しくオープンしたばかりです。
この3年の上海のすべてを短い記事で振り返るのは難しいので、上海に思い出のある方、上海にまだ行ったことがない方は、ぜひ2023年に訪れてください。ちょうど100年前、上海行きの船に乗った作家の村松梢風はこう記しています。
「上海に行く目的は世界を違った角度から見たかったから。私は起伏に富んだ刺激的な人生を送りたかった。それを実現するために、上海は理想的な場所だったのです」