だから何?
風がびゅうびゅう吹いてるのをきいて
胸がぎゅうとしたから、何?
バスの車窓から遠くなる故郷の道が
夕陽のオレンジに染まっていったから、何?
泣きそうになったから、何?
そんなことに構ってられんわ
私がいう。
いいんよ、いいんよ
わたしはいう。
胸がぎゅうとなれば、泣きそうになれば
なっていいんよ
何でもいいんよ、そうなんやろ。
そんなに大人にならんでいいやん
何でも、私が思うこと
わたしはうけとめてあげる
いなくなった誰かのかわりに
わたしは私の隣にいる
選評/高橋源一郎
そんなことに構ってられんわ
その通りである。そんなことに構ってられんわ、だ。よくいってくれたよ、「水面」さん。そういえば、最初にこの詩を読む時、もしかして、「隣」さんの書いた「水面」かと思ったりする人もいるかもしれない。だって、「隣」はなにかの隣に、つまりすぐ傍にあるもので、「水面」には、そのもの以外の傍にあるものが同時に映っているからだ。早い話しが、兄弟みたいなものですよ、「水面」と「隣」は。そういうわけで、この詩を読むということは、詩人の名前と詩のタイトルの違いなんかに構ってられんわ、と思うことなのかもしれない。それにしても、いいことばだよね、「そんなことに構ってられんわ」って。それでもって、この詩に中にうごめいていることばたちは、みんな、「そんなことに構ってられんわ」って感じなんだよね。それでいいのだ。