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今月の詩

2018.09.05

かくれんぼ

詩/松原 和音

探しているといわれたときから
私ではないか

思っていた

呼ばれたわけではないけど

街中で
ふと
立ち止まってみた

爪の先のマニキュアが光っていた

手を伸ばした
前にも
後ろにも

風が背中を押した

もうすぐ着くと
言われた気がした

     

選評/文月悠光

素晴らしい詩はときに思い込みから生まれる。「私ではないか」。ありえない予感がふくらみ、立ち止まる。風の背に触れて、自分のいる場所を問いかける。私が別の誰かであった可能性を思う。爪先の色まで確かめてみるが、まだ実感は降りてこない。「もういいかい」も「まあだだよ」も聞こえない。探し求めているのは、きっと私自身。もうすぐ私に私が追い着く。風に教わりながら、行き着いてみせよう。