かばんの底にいたコーラキャンディ
ちゃいろい楕円のぺかぺか
ぽいと放りこんで
甘さに泣きたくなる
わたしに甘いのは世界中でこの一粒だけみたいな気分
涙がでなくて思いだす
これは新宿で、わざわざ並んだ抽選で、
色のついてない玉と引き換えにもらった
はずれという箱から連れてきたキャンディ
シュワともしない、ひらっぺたい甘さを転がして
歯磨きしてからちゃんと眠ろう
選評/高橋源一郎
わたしたちのかばんの底にある「ちゃいろい楕円のぺかぺか」たちについて
それらは、たとえば、わたしたちの「かばんの底」にある。それから、わたしたちの「ポケットの中」にもある。それに、わたしたちの「机の引き出しの中」にもある。だから、それらは、ふだん、わたしたちは目にすることができない。しかも、もともとは、わたしたちが何らかの手段で手にいれようと欲したはずなのに、である。それらのものを、わたしたちはすっかり忘れてしまった。他のあらゆる、一度は欲して、手に入れようとしたものすべてと同じように。詳しくは、はるのかまぼこさんの詩を読んでください。そこにぜんぶ書いてあります。