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今月の詩

2018.05.09

ゴム製のあひる

詩/ゆとり

あんまり恋に疲れてしまったから
勢いよく湯船にとびこんだら
お湯があふれた
そして浮かべていたゴム製のあひるが
おとといこの家を出たあの男みたいな勢いで
わたしと入れ替わりにとびだした

デジャヴ、デジャヴ、デジャヴ。

喉元まで現実につかり
すっかりのぼせてしまったわたしは
床に転がったあひるに
なんとなく手を伸ばせなかった

選評/文月悠光

とにかくズシンときました。別れた男は、ゴム製のあひるみたいにちっぽけでチープな存在……のはずだったのに、いつのまにか、手を伸ばせないくらい重い存在になり果てていたんですね。〈デジャブ、デジャブ、デジャブ〉という響きが、湯の飛沫となって刺さってくるようです。喉元までつかった現実の熱さに、私も黙り込んでしまいました。この詩を投稿されてから一年、今はあひるの中の空気も抜けた頃でしょうか。