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今月の詩

2018.01.12

いえないことについて考えてみた

詩/セロリン

年齢が重なってくると
いえないことが増えてきた
だんだんと
増えてきた
うーん
そうなんだよなあ
それはねえ
そうねえ
そうなんだよなあ
いえないんだよなあ
ごめんねえ
いえなくて。

いえない。
いえないんです。
いえません。

でも
でもでも
時間がたつと
いえるかも
と、思ったりもする。

そうだ
きっと
そうに違いない

でも
でもやっぱり
でもでもやっぱり
いえない。

思い出した。
いいたくないことは
いわなくていいんだよ。
そういっていた人のことを
思い出した。
そうか
そうなのか
そうだったのか
いわなくてもいいんだ
よかった。

みなさま
いわなくて
よくなりました。

選評/高橋源一郎

ぼくも、いえないことについて考えてみた

セロリンさんの詩を読んでいると、ぼくも「いえないこと」について考えてみたくなる。いえることについてよりも、いえないことについて、の方がいろいろと考えたくなる。いえないことについて考えていると、当然、書けないことについても考えてみたくなり、もしかしたら、この世界には、「ある」ものより、「ない」ものの方がずっと多いんじゃないかと思えてくる。もう「ない」もの、まだ生れてはい「ない」もの。無限の「ない」に囲まれた、有限の「ある」。うーん、なんだかめまいがしてくるではありませんか。