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今月の詩

2022.12.14

「生まれかわらない猫」

詩/詩村あかね

何万回生きても
あの猫にはなれない
愛について
まだしらないから
わたしはうまれかわっても
手の中の
枯葉のように脆いものを
握りつぶさぬように
いきるんだろう

そうしているうちは
たぶん猫にすらなれなくて
異国の空の下で
風や雨に翻弄される
読み捨てられた新聞祇や
履きつぶされたスニーカーなんかに
なってしまうおそれがある。

道の日向に猫が寝そべる
ながく伸びをして
歯をみせながら欠伸をする

一生が一日であるように
いきているから
猫は生まれかわらないことに
気づかない
愛は考えるものではなく
もらったりあげたりするものでもなく
たぶん育てていくもの、で
勝手に育つことはない
猫よりすこし厄介で手はかかるけど
静かな木陰と陽だまりを
代わりにくれるだろう

猫が猫であればこそ
わたしはわたしでいなければ