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Now, Then!

GIRLS ROCK BEGINNINGS Vol.01 大貫妙子[後編]

2020.06.24

撮影/鋤田正義

取材/山中聡 構成/君塚太

ヘア/成澤雪江 メイク/KOTO

前回は(記事はこちらから)「夢中になれるものを見つける大切さ」を語ってくださった大貫妙子さん。大貫さんにとって音楽は、そしてロックは、まさに時を忘れて没頭でき、自分を全く新しい場所に連れ出してくれる宝物でした。後編では音楽から学んだ女性の生き方、食事や体のケアを含めたライフスタイルを深く掘り下げます。
デヴィッド・ボウイなどの撮影で知られる世界的な写真家・鋤田正義さんの撮り下ろしポートレイトとともにお楽しみください。

魂を揺さぶられた 「カッコイイの塊」

 ロックのレコードを初めて買ったのは、グランド・ファンク・レイルロードだったかな。赤いジャケットの『グランド・ファンク』です、今でも持っていますが。伝説になった雨の後楽園球場のコンサート(1971年)は、さすがに行けませんでしたけれど。
 中学校の時はギターを弾いていたので、文化祭でビートルズの「This Boy」を歌ったりしました。高校に入ってからは、他校の人とバンド組んで、フィフス・ディメンションやママス&パパスのコピーをしたり。でも、それより当時の日本のロックは刺激的でした。例えば村八分とか。10代の終わり、高校卒業する前の夏休みに、日比谷の野音に村八分が出ると聞いてひとりで行ったんです。その時までは無遅刻無欠席の、ただ音楽好きな真面目な生徒だったし、そういうところへ行ったことなかったし、ものすごくドキドキしながら(笑)長い髪でスモック着て、花柄の長いスカート、当時のヒッピー風ファッションで。
 きっかけは、ウッドストックなんですよね。ウッドストックの映画(1970年日本公開)を観ちゃったから。日本とまったく違う、 世界はこんなことになっているの?と。男も女もみんな裸で池に入っちゃったりしていて、もうびっくりして。カルチャーショックで、ホントに目からウロコが何枚もボロッと! 今まで自分が真面目にしていたことは、なんだったんだろうみたいな(笑)。
 アメリカのポップス系だとニール・セダカとか好きで聴いていたのに、ウッドストックを知ったら、びっくりしますよね。ウッドストックに出ていたミュージシャン、ザ・フーとか手を上げると衣装が鳥の羽みたいで。うわっ!かっこいい!
 ジミ・ヘン(ドリックス)、ジャニス(・ジョプリン)もそうだし。CSN&Y、スライ&ファミリー・ストーン! 聴いたことのない音楽だらけで。10代終わりに魂を揺さぶられた強烈な経験が、その後の自分を変えたのかもしれませんね。

鋤田さんから特別に提供いただいたアルバム『AVENTURE』のアザ−カット写真

あふれる情報を省いて 出会いにアンテナを張る

 無意識の意識のようなところで、ずっとアンテナは立てているんでしょう。SNSからの情報は調べたいこととか、必要だと思うこと以外、ほとんど見ませんね。スマホも、街に公衆電話がなくなって不便だからっていう理由くらいにしか使っていない。いちばん困るのは停電ですね、それだけは困ります。こんなご時世なのに、携帯の予備バッテリーも持っていなかったことに気づき2つ買いました。情報だけでは空腹を満たせないので、災害時の食品備蓄はバッチリなんですけど。最近は過激な気象に見舞われるので、電気の必要性を強く感じて、さらに大きなバッテリーとパタパタおりたためるソラー発電機まで購入(笑)。なにより、近隣の方々とは常に交流があるので安心です。断捨離を言われていますが、情報も同じ。どうでもいいことを詰め込んでいると、大切なことをスルーしてしまう。頭の風通しはよくしておこう!と思っています。そうすることで、本当に必要なことはアンテナがキャッチしてくれるようです。新たな人との出会いも変わらずありますし、その方とは1曲一緒に制作中です。
 何度目かのレコーディングでフランスに行くきっかけとなったのも、車を運転している時に、J-WAVEからある曲が流れてきて、「何これ!」と驚いたことがきっかけでした。運転中だったし、アーティスト名が分からなくて、曲がかかった時間だけ覚えて、家に帰ってネットで検索したら、リリキューブというフランスのグループだとわかって。それで実際にパリに会いに行って!一緒にレコーディング(1999年『アトラクシオン』)するところまでいったんです。リリキューブに会ってみたら、彼らのほうが驚いて! 「よく僕達のことを知っていましたね」と。彼らの曲が日本でOAされているなんて思わなかったみたいで。
 実際に会ってみて納得することってたくさんあるので。「これすき! いいな」と思うと行動に移すタイプだったんだ、と振り返ってみてわかったことですけれど。情報は受け取るのではなく、必要だと思ったら取りに行く、というのが正しいのでは?と思います。

どんな女性にも 7年周期で追い風が吹く

 女性は7年に1回、良い周期が回ってくるそうなんです、人に聞いた話で、そのことを長く忘れていたのですが、40年以上仕事を続けてきた経験から、それはまんざら間違いではないのではないかと思っているんです。例えば、思いがけなくアルバムが売れて、人気が出てコンサートにもたくさんの方が来てくださる。これが「追い風状態」。いったいその風は何処から吹いて来るのかわからない。色々な条件が重なってそうなっているのかもしれない。でも、少しづつ状況は変わっていき、風が弱まっているのを感じるけれど、同じような努力を重ねても風を感じることができなくなってくる。その時にあきらめないで、風をあてにせずに自力でオールを必死に漕ぐと、また風が吹いてくるんです、前の風とは違っていても。本当の話(笑)。新しい風が吹いてくると、オールから手を放しても風が運んでくれる。だから、世間的には注目されていないタイミングで、以前から行きたかったブラジルでのレコーディングや、ネイチャーマガジンの執筆で南極やアフリカに行きました。当時は音楽だけではなくて、文章も書いていたので、大変ではあったんですが、それは後々の宝になっています。兎にも角にも好きなことだから続けられる。大事なのは、次の風が吹くまでの間、自分に嘘をつかずに頑張れるか。世の情報にいちいち惑わされない。自分の経験で得たものの積み重ねは、家でいえば基礎。嵐が来ても吹き飛ばない家をそこに建て、大きくなくても居心地の良い場所として提供できれば、というのが私の仕事への思いです。

自堕落を知らない女性の食事と体へのケア

 仕事柄、常に体調管理はしています。20代の頃から定期的に整体を受けて、食事にも気をつけています。基本的に主食は発芽させた玄米、パスタとか麺類も食べますが、近年は小麦をあまりとらないようにしています。もともと甘いものはあまり食べないので。特に白糖がたっぷり入っているケーキとか、口にするにしても一欠片、ですね。若い頃はステーキとかもパクパク食べていましたが、今はまったく。心がけているのは「腸をきれいに」ですね。おかげさまで、一度も便秘したことないんですよね(笑)。
 秋口から春くらいまでは、足を冷やさないように、就寝時は必ず湯たんぽを入れているし、夜は寝る前に腰湯。お湯につかるのは腰までのほうが体は温まるんです。肩はバスタオルで包んで冷やさないように。それこそ「花椿」や雑誌を読みながら(笑)、頭のてっぺんからじんわり汗が出るようになったら、芯が温まっている証拠です。ツアー中は、足湯器を運んでもらってステージ前に入ることもあります。
 一番大切なのは、やはり喉。ステージで声が出なかったら、本当にお客さまに申し訳ないし、自己嫌悪いっぱいになりますからね。おそらく役者さんも、体のケアは相当していらっしゃると思います。そうしないと長くステージに立ち続けられないですよね。
 お酒は飲みます。大好き(笑)。でも若いときに比べたら、はるかに量は少なくなりました。本当は自堕落な生活をしてみたい(笑)。夢に見るくらい。「もうステージに立たなくていい」と決めたらですけれど。とはいえ、どうやったら自堕落になれるか分からない(笑)。「自堕落」って、どうやるの? いつも立てているアンテナもしまって。お酒を飲んだら、足湯も腰湯もしないで、歯も磨かないでドサ〜ンと布団に倒れ込む!みたいな。してみたいなあ……いや、きっと3日でイヤになるでしょうね(笑)。

媚びない姿勢が 自分が自分であることを守る

 ロックって音楽ジャンルのことではないと思うんですよね。若い頃は、その定義を反体制、反権力だと思っていましたが。自分が自分であることを守り、媚びない姿勢がロックなんだと思っています。フランス録音とかしたりしていた頃も、渋谷陽一さんのインタビューを受けた時に、「大貫妙子はロックである」とおっしゃっていましたから。そいうことにしておきます。
 若い頃はジャニス・ジョプリンみたいな声に憧れて、なんとか声をハスキーにしたくてお酒を飲んで、大声で歌ったりして、声がハスキーになったと喜んでいたり。でも、一夜明けると元の声に戻っちゃうんですよね。音楽のカテゴリーとして声がロック向きじゃないというのは決定的な事実なので。シュガー・ベイブや最初のソロの頃は、今より太い感じで声を出していたんですけれど、今聴くと消去したいという気分になりますね。憧れて手本とするものにこだわりすぎていた。でも、ある時から受け入れるということへ考えが変わってきて。それは、私自身が気づけなかった私を、客観的に引き出してくれたプロデューサーとの出会いがあったからですし、アレンジャー、ミュージシャン、スタッフ。全ての方々に山ほど感謝しても足りません。なにより私の音楽を聴いてくださるたくさんのファンの方々に、深く御礼申し上げます。

『Shooting star in the blue sky』
1993年にリリース。小林武史との共同プロデュースでロンドン・セッションでのサウンドメイクは秀逸。CMソングにもなった「しあわせのサンドウィッチ」や「会いたい気持ち」(矢野顕子が後にカバー)、ドラマの主題歌「春の手紙」などが収録。上質なポップス・アルバムとして人気が高く、改めて大貫妙子のソングライターとしての力量を知らしめた秀作
『UTAU』
2010年にリリースされた坂本龍一との共同制作アルバム。大貫妙子の深みと透明感が共存した歌声と坂本のピアノ演奏のみで展開され、収録曲は主に坂本龍一の既成の曲に、大貫妙子が言葉を紡いだ作品で構成。ミニマムな空間から、音楽の素晴らしさ、力強さが無限に広がる。本作を携え、二人だけでステージに立つ全国ツアーも行われた

クリエイターの紹介

大貫妙子

ミュージシャン

東京生まれ。73 年、山下達郎らとシュガー・ベイブを結成。76 年にバンド解散。同年『Grey Skies(グレイ・スカイズ)』でソロ・デビュー。以降、27枚のオリジナル・アルバムをリリース。CM・映画音楽関連の作品も多く、CMでは資生堂の85年春のキャンペーン・ソング「ベジタブル」、映画では『Shall we ダンス?』(96年/周防正行監督)のメイン・テーマ、第21回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した映画『東京日和』の音楽プロデュース(98年/竹中直人監督)などを手がける。エッセイ集『私の暮らしかた』(新潮社)など著書も多数。
近年は6名のメンバーによるバンドライブ活動のほか、Strings quartettoを中心とした《Pure Acousutic》コンサートを行う。ソロ・デビューアルバム以降のオリジナル・アルバムをアナログレコードとして順次再リリースし、それらの全世界音楽配信がスタートしている。
http://onukitaeko.jp/info/top.html

【大貫妙子さんのコンサートのご紹介】
■『スノードロップ』大貫妙子 Guest 原田知世
日時:2020年9月26日(土)開演17:00
会場:新宿文化センター 大ホール
新宿文化センター公式サイト
大貫妙子 八ヶ岳高原音楽堂コンサート
日時:2020年7月23日(木・祝)・24日(金・祝)
第1回 14:30開場/15:00開演  第2回 17:00開場/17:30開演
共演:小倉博和(g)、佐橋佳幸(g)

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