FASHION STORY
2023.01.25
UPDATE FASHION vol.00 現代に漂う“豊かさ”- 宇田川直寛
写真/宇田川 直寛
過渡期であるいま、時代の“豊かさ” を映すファッションは何を表しているのでしょうか?
ファッション新連載「UPDATE FASHION」は、現代のファッションをさまざまな角度で捉えようとする試みです。そのプロローグ vol.00としてお送りするのは、「現代のファッション観」についての考察。時代時代に変わりゆくファッションの価値観、その現在の姿を、アーティストコレクティブCulture Centreに参加する作家の作品を通して考察していきます。今回は宇田川直寛さんの作品をご紹介します。
ゆれる時代、捉えどころのないファッションという名の現象を探して。
昼間が静かすぎる。あるいは家電の音が騒がしい。家族は仕事や保育園に行き、私が作業をしている部屋の扉のすぐ外には洗濯機が回っている。洗ってから乾くまで五時間半ほどは稼働しているので、家族がいない昼間はずっと洗濯機の音と過ごすことになる。ファッションを意識していた20代よりも、今の方がずっと服を意識した生活になった。子に用意する服の数、暑さ、寒さ、また少し背が伸びた、靴がもう小さくなったか。私のフリースは毛玉ができやすいな。これはウールだから長持ちさせたい。生活はなかなか思い通りになかなか行かない。あっちへこっちへと自分が思ったのとは違う方向へ勝手にとっ散らかって勝手に変なところで集まる。しかしだ、そういうものじゃなかったか? そういうものを楽しんでいなかったか? 古着屋で妙な柄の企業Tシャツを買ってみたり、とりあえずアロハシャツを着てみたり、いや、これはない、という髪型が好きではなかったか。そうでした。こんなふうなものをずっと楽しんでいたのでした。何一つまとまらず、方向性も主張もバラバラで、とっ散らかってて変な集まりになってしまうもの。それでまあ、それでいいかって。変だけど。そういうふうな生き方だし。そういうのが大好きだったわ。
―宇田川 直寛
宇田川 直寛