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Column

2020.04.10

【特別企画】今あなたにおすすめしたい、この作品。Vol.3

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出をひかえている今。こんなときだから、家でゆっくり過ごすときにおすすめの作品を、日ごろ花椿に協力くださっている方々にお伺いしました。

第3回は、第33回現代詩花椿賞受賞者でもある、詩人の最果タヒさんです。日々の暮らしの大切さを感じられる作品を3つご紹介します。アニメーションになっている作品もありますので、本とともにぜひチェックしてみてください!

生きている、と、生活をする、は本当はイコールなんかではなく、そこにある隔たりに鈍感でいられるほど幸福であると感じるが、それは決して世の中のことに対して鈍感だったからというわけではなく、どんな生活も、自分の生と、他者の生に結びついていて、今とても誰かのことが心配なら、それはあなたはずっと前からその人のことをどこかでは心配していたということなのだと思う。生活の機微として。日常とは消えたり現れたりするのではなく、今はとても声が小さい、というだけかもしれない。そう信じたいし、そう信じられる作品を3つ紹介します。ー最果タヒ

『それでも町は廻っている。』

私はこの作品の主人公は町そのものであると思っている、もちろん歩鳥(ほとり)という主人公はいるし、彼女のことは大好きだけれど、でも彼女のための物語でも彼女の人生でもなく、ここにあるのは町に暮らすという行為のその奥にある不思議さや喜びや切なさで、つまり私たちの手の届くところに全てがあるように感じさせてくれる。この漫画がいつまでも読まれ、そして愛されていくことを心から願っている。
『それでも町は廻っている。』(石黒正数・著、少年画報社)

『よつばと!』

子供が何をみているのか、何を考えているのか、ということを大人になると、さまざまなきっかけで考えてしまう。こういう日々においても、たとえば、自分が子供だったらどうだっただろう、とか、子供たちはどんなに不安だろう、とか。でも、こういうことを思いやるとき、私は、未来を切り開くのは子供たちだ、ということを忘れている。それは決して過度な期待するものではない、そういう責任を彼らに負わせるわけではない、ただ、彼らがみている世界は今も変わらず綺麗なのかもしれないということ。そういう形での未来を見せてくれる作品です。
『よつばと!』(あずま きよひこ・著、KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)

『ヨコハマ買い出し紀行』

不安も希望もそれで100%なんてことはありえなくて、いつもそれらは生活の内側にあり、そうして生活の向こう側には必ず、他者がいて世界があるということを、思い出させてくれる作品です。穏やかさとはとてもしぶといものなのかもしれない、そんな意味での希望があります。世界が終わるということを想像する時、真っ暗な街並みを想像することは容易いけれど、そこにもわずかな生活が残っていて、朝露できらきらと光っているのかもしれないと、想像をする。こういう時代に生きようとするとき、この作品をときどき、体と心が必要としている。
『ヨコハマ買い出し紀行』(芦奈野ひとし・著、講談社)

最果タヒ

詩人

1986年生まれ。2004年よりインターネット上で詩作を始める。詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞受賞。詩集『グッドモーニング』で中原中也賞受賞。その他、小説、エッセイなども多数執筆。17年に、詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化。その他、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』、小説に『十代に共感する奴はみんな嘘つき』などがある。最新詩集は『恋人たちはせーので光る』。新刊にエッセイ集『「好き」の因数分解』、『コンプレックス・プリズム』がある。
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