東京・原宿を拠点とする「NEW AUCTION」は、国内のオークション会社で経験を積んだ木村俊介氏が、「アートをより面白く、オークションをより身近に」という志を胸に2021年に立ち上げたオークションハウスだ。
アートのオークションといっても、映画にありがちな、格式高い会場で畏まって行われるあの雰囲気ではなく、いたってカジュアル。会場は表参道の裏通りの開放的なポップアップスペースで、オークションが初めての方でも気軽に入りやすい。
正面のスクリーン上に作品写真と開始価格が投影され、オークショニアによってロット番号順に売り出される。来場者は出品作品のすべてが掲載されたカタログを繰りつつ、お目当ての作品がスクリーンに登場したら番号札を掲げて入札するという流れだ。来場のほか、電話やネットでも参加が可能。1点につき2分ほどでテンポよく落札されていく。
従来型オークションの在りようにとらわれないのは、作品の著作権者(アーティスト)たちに対しても顕著だ。たいていのオークションでは、作品がいくらで落札されようがアーティストの方には一銭も入らない。
ところがNEW AUCTIONでは、落札作品の売上の一部を彼らに還元する、という制度を日本で初めて独自に導入。オークションを通して、アーティストや遺族の方々の活動に少しでもプラスになるような仕組みを築こうとしており、アートマーケットの継続のためにも大切な試みだといえる。
アートの新しい楽しみ方
さて、第4回目となった公開オークション「NEW 004」は6月24日に開催された。ピカソにウォーホルなど誰もが知った名前から新進作家まで幅広く品ぞろえ、これまでで最も多い200点近くの作品が競りに出された。
最高落札額となった草間彌生さんの「波」(約2700万円で落札)など、この1日の売上は2億7千万円にのぼったという。最高額と総額を聞いてしまうと、とたんにお金持ちの世界だけの話、と思えてしまうかもしれないが、10万円以下で落札された作品もいくつかはあり価格帯も実に幅が広い。たとえ入札に参加せずとも、競りの応酬に見入ったり、予想価格との差に驚いたり、「こういう傾向のアートが人気なのか」と発見したり。様子を眺めているだけでも、美術館でアートを鑑賞するのとは一味違った時間の過ごし方が楽しめる。
オークション当日の作品展示は限られた数点のみだが、事前に作品の実物をすべて、つぶさに鑑賞できる機会、下見会も設けられている。今回のセールでは遡ること1週間前から前夜まで、渋谷のMIYASHITA PARK内のアートギャラリーSAIにて開催された。
オークションを通して新たな体験を提供したいとビジョンを掲げるNEW AUCTION。購入まではいかないが見るだけという方もウェルカムらしいので、下見会を訪れてから オークション本番への参加という一連のアクティビティを、新しいアートの楽しみ方としてトライしてみるのはいかが? 次回のオークションは2023年11月4日です。