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Column

2023.04.11

ロエベ財団が特別協賛、ケリス・ウィン・エヴァンス展

文/呉 佳子(資生堂ファッションディレクター)

ケリス・ウィン・エヴァンス 展示風景 草月会館 石庭「天国」 2023年4月1日 – 29日 撮影:髙橋健治 / Courtesy of Taka Ishii Gallery

ロエベ財団のサポートのもと、ことばや知覚をテーマとした立体作品で知られるイギリス人アーティスト、ケリス・ウィン・エヴァンスの個展が5年ぶりに東京で開催されています。

イサム・ノグチが手掛けた石庭「天国」を会場に展示されたのは、ゆっくりと明滅を繰り返す光の柱や、クリスタルガラス製のフルートとコンプレッサーで構成される自動演奏作品“Composition for 37 flutes”(2018年)。正面奥には大型ネオン作品がまるで光のカーテンのように浮かびます。

ケリス・ウィン・エヴァンス 展示風景 草月会館 石庭「天国」 2023年4月1日 – 29日 撮影:髙橋健治 / Courtesy of Taka Ishii Gallery

ケリス・ウィン・エヴァンスの作品の核にあるのは独創的な引用。今回のこのネオン作品”F=O=U=N=T=A=I=N”(2020年)では、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』(吉川一義訳)内の、噴水が描写されたパートが引用されました。縦書きに綴られる日本語を眺めていると、まるで輝く水が上から下へと流れ落ちているかのようです。光を使った無機質な作品の合間には松の木が配され、石庭自体の独特なデザインもあいまって会場の空間がまるごとインスタレーション作品となっています。

ケリス・ウィン・エヴァンス 展示風景 草月会館 石庭「天国」 2023年4月1日 – 29日 撮影:髙橋健治 / Courtesy of Taka Ishii Gallery

関係者を招いたプレビューイベントでは、この石庭を舞台に、能楽師、山階彌右衛門が舞を披露。能では「見立て」といってあるものを別のものになぞらえることがありますが、本展で展示される作品も、鑑賞者それぞれが思い思いに「見立て」を楽しめ、ケリス・ウィン・エヴァンスの日本文化への深い理解がうかがえます。

ケリス・ウィン・エヴァンス 展示風景 草月会館 石庭「天国」 2023年4月1日 – 29日 撮影:髙橋健治 / Courtesy of Taka Ishii Gallery

まるで鑑賞者を作品の中に誘いこんでいるかのような”F=O=U=N=T=A=I=N”。石庭を散歩しながら物語の世界を訪ねてみるのもよいかもしれません。

【INFORMATION】

ケリス・ウィン・エヴァンス展
会期:2023年4月1日(土)~29日(土)
開場時間:10:00~17:00 |定休日:毎週日曜日
会場:草月会館1F 石庭「天国」(東京都港区赤坂7-2-21)
入場料:無料