Rocky’s report from Shanghai
2023.02.24
Vol.32 若い世代に向けた北京の新しいショッピングスポット
文/令狐磊 Rocky Liang
翻訳/サウザー美帆
今回は最近北京で話題のDT51を紹介します。DT51は中国のみならず世界レベルでも最高の売上高を誇る人気の商業施設SKP(2021年度の売上額は247億人民元=約4800億円)の傘下にあって、斬新な商品のセレクトが注目されています。DTはDestinationの略で、51は中国のIT用語でI want。「若い層が欲するライフスタイルの目的地」という意味のネーミングです。
関係者によるとターゲットは北京北部の中・高級住宅地に住む約126万人。周辺の不動産価格が1平米あたり10万元(約200万円)なので、それなりに豊かな層が集まっているエリアといえます。広さは約4万平米。場所は市街地中心部から少し離れていて、王府井、西単、国貿といった北京中心のショッピングモールと比べると規模は小さいのですが、今、中国では多くの消費者が自分の住むエリアでよりよいものを手に入れたいと考えていて、その傾向に応じたものともいえます。
ターゲット年齢は若く、SKPより低い価格帯で、SKPのバイヤーチームにより全体の約50%の店舗を自社で運営しているという点にも注目です。これはSKPグループが蓄積してきた店舗運営能力を反映したもの。各フロアにある大型マルチブランドセレクトショップ「DT SELECT」には、世界各国の多様なデザイナーズブランドの商品が集められています。
想定するコアな購買層の年齢は30代半ばから後半。既婚で子供がいて、購買意欲が旺盛な若いファミリーに対応。DT SELECT MOM&MEでは、授乳室、キッズルーム、子供用トイレと洗面台、ベビー用体重計、親子で楽しめる商品なども充実。子供向け書店では、科学、アート、コミック、絵本など、中国語と外国語の本を合わせて約8,500冊を取り揃えています。
各店舗のデザインも見ているだけでも楽しくなります。バーバリーはDT51のための期間限定ショップをつくり、新シーズンのローラバッグの象徴的なキルティングデザインを内装に採用しています。
また、商業空間のメインビジュアルにインタラクティブなインスタレーションアートを採用している点にも注目。映画の特撮映像などで知られる中国のクリエーティブチームJIN FXとのコラボレーションによる2つの作品「Kangaroo Territory」と「Flower Encounter」が、SNSで話題を集めています。
「Kangaroo Territory」はロビーフロアに設置され、31匹の揺れ動くカンガルーがゲストを迎えます。「Flower Encounter」はセンサーで人の動きに反応する56匹のウサギが、花畑の中で姿を現したり隠れたり。
2022年のマッキンゼーの調査データによると、1月から9月の中国本土の一人当たり可処分所得は前年同時期に比べて5.3%増。「コロナ後に消費者が戻ってくれば、彼らは必ずたくさんのお金を使うはず」との分析があります。香港、東京、パリなど旅先の都市で高級品を購入するという従来の消費習慣も、コロナ禍を経て変化すると思われます。「DT SELECT」のような独自のユニークな視点によるセレクトショップ的な手法が今後地方都市にも普及すれば、中国人の消費スタイルにも、さらなる変化が訪れるでしょう。