カミナリの夢を見た
どんどんカミナリが
近づいて来る夢
ああ、自分に落ちてしまうと
思った瞬間に目が覚めた
騒々しい夢
その日からわたしの心の中では
ずっとカミナリが光っていて
わたし、この光をどう使おうか
死ぬほど考えている
選評/高橋源一郎
伊藤さんの詩を読んで以来ずっと、この「カミナリ」は何だろう、と考えている。夢の中に出てくるものは、何かの象徴だそうだから、突然の出会いとか。いや、もっと直裁に、強烈な一目惚れみたいなこと。ちょっと待て、もっと密やかな、内奥に隠れているもののことじゃないか。静かに潜んでいた「それ」がある日、突然、顔を出す。そうじゃないかも。忘れていた記憶、遥か昔、田舎でおじいちゃんに手を引かれて歩いていたとき、突然、聞こえてきた雷鳴、そしてカミナリの音。いや……わかっているのは、この詩が、伊藤さんの夢そのもので、詩の中で確かにカミナリは鳴っていることだ。