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今月の詩

散歩

2022.03.01

詩/栗山 茜

姪が 野原を 駆逐する
綿毛 しょってる タンポポや
目につく すべての ダンゴムシ
大地の 骨たる しもばしら
野原を 元気に 駆逐する

わたしが あとを 追いかける
未読で 放置の メールたち
おでこに でてきた 吹き出物
日に日に 早まる 時間の流れ
わたしの 足元 しがらみばかり

姪が人生を 謳歌するとき
いつかかさぶたが 乾いたあとに
ランドセルから 羽生えて
口と爪たちに 紅のせて

姪よ 人生を 駆逐してゆけ
誰も ダメとは 言わないからさ
丸まって しまうな
芽吹く 気持ちのままに

その手は だれかを 愛し助けて
その足 ぐらつく 地にも根を張り
姪よ 人生を 駆逐してゆけ

 

 

選評/大崎清夏

 歳の離れたふたりの登場人物による、中原中也のリズムを辿り直すような、「詩歌」の中でも「歌」により大きな比重のかかった、軽やかな散歩だ。「姪」はランドセルを背負いはじめたばかり、あるいはその手前の年頃だろうか。リズミカルなスピード感で次々に野原の生命を発見してゆく姪に対して、(詩は同じ抑揚で進んでいくにも関わらず)対する「わたし」の歩みはもっさりしている。語彙の取捨選択による対比が鮮やかだ。
 通常なら「疾駆」とでも言いたくなるところ、「駆逐」という(ちょっと破壊的なイメージの膨らみをもつ)言葉が肯定的に使われているのは、作者の意図だろうか。ちいさな怪獣めいた姪の無邪気さや自信や集中力が表れているし、後半の「丸まって しまうな」ともよく呼応している。もしかすると、「わたし」も姪にこのもやもやした胸のつかえを駆逐してもらいたいのかな。
 最終連の「愛し助けて」や「地にも根を張り」と「駆逐」との言葉の相性にやや違和感を憶えつつも、ちゃっかり元気が湧いてくる詩だ。

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