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偏愛!資生堂

2020.09.28

第45回 福田 愛子 ×マジョリカ マジョルカ

文・イラスト/福田愛子

今年に入ってから自分と対話する時間が増えた。私は今年34歳になったわけだけれど、ありのままの自分を受け入れて、自分自身を、自分の作品を、本当の意味で好きになれたのは ごく最近のこと……。

 自分を肯定することは、自分に自信をもつということに似ていると思っていて。現状に満足できてないときに自分を肯定することってじつはとてもむずかしい。よく30歳になると自然と肩の力が抜けて生きやすくなると言うけれど、歳を重ねることで自信をつけられるほど私の心は単純なものでもなくて、結局は年齢など関係なくどこまで向き合えたか、努力に裏打ちされた経験でしか自信は生まれないと私は感じてる。だからといって気負う必要も全くなくて、大小かかわらず自分がやってみたいことに挑戦して満足いくまでやりこんでみる。そんなひとつひとつの積み重ねで自分の自信レイヤーは少しずつ形成されていく気がする。

 私が生きてきた中で一番の大冒険は、紛れもなくイラストレーターになることだったわけだけれど、ルーツを辿ると18歳で留学した経験が大きかったように思う。当時はグラフィックデザイナーになることを夢みてボストン近郊の大学でグラフィックデザインを勉強していて、英語が話せないまま留学してしまった私は最初かなり苦労した。さらに私の大学は、現地企業でインターンシップ経験を積まなければ卒業資格がもらえない決まりがあって、そのインターン先というのは大学側で用意してくれるのではなく、自分で見つけてこないといけないという、なんともスパルタな環境だった。

 その後無事に現地の出版社とアパレルの会社でのインターンが決まったのだけれど、その面接時に纏っていたのがじつはマジョリカ マジョルカのシャドーカスタマイズの熱情(RD422)。目尻にポン、とポイントでつけたり、今でいう地雷メイクのような下まぶたを赤くするのが当時のマイブームで、一回のせるだけでものすごく発色がよくってね。そんなエッジを効かせたメイクは現地でとってもクールね!と褒められて、それをつけているときは少しだけ自分に自信がもてた。

 若い頃の自分は胸を張れるものなんて何ひとつもち合わせていなかったけれど、あのときポン、とつけることでパワーがみなぎる感覚は今でも忘れられない。それは一種のおまじないのような願掛けに近いのかもしれないけれど、こういう些細なことで勇気をもらえるってすごく大事。時を経て私は去年「MAJOLIPIA」のキービジュアルを担当させていただけることになったのだけれど、そんな思い入れのあるブランドとお仕事できたことは今でもたまに信じられなくて、マジョリカ マジョルカは私にとって夢を叶えるためにそっと背中を押してくれる、いつまでもパワフルな魔法みたいな存在だなぁとしみじみ思うのです。

イラスト/福田愛子

福田 愛子

イラストレーター

イラストレーター・アーティスト。ブリッジウォーター州立大学芸術学部グラフィックデザイン学科卒業。2014年よりイラストレーターとしての活動を本格化。懐かしさやタイムレスな美への価値観を根底に据えながら、iPad やAR などのテクノロジーをアナログの持つ風合いと融合させることで、既成概念にとらわれない表現を追求している。おもな仕事に雑誌BRUTUS「男の色気」イラスト連載、資生堂マジョリカ マジョルカ「MAJOLIPIA」など。現在は東京とニューヨークを拠点に国内外で活動し、2019 年には日本人初アーティストとして「Adobe Creative Residency」に選出された。
http://www.aikofukuda.com/
https://twitter.com/aikofukudadraw