

そんなアーホ!な作品を世に出した資生堂さんのキュレーションセンスって一体?!と、俄然興味を持ちました。そして初めてギャラリーを訪れたときに開催されていたのがアートチーム目【め】の展覧会。入り口の階段を降りると、そこは高級ホテルのようなエントランスが。資生堂ギャラリーってなんだか不思議な構造になっているんだなと思いながら、中に入って行くとやはり部屋がいくつもあり、その部屋ごとに不思議なアート表現がなされているというもの。以前から注目していた目【め】の作品群は脳を擽(くすぐ)ってくれる面白いもので、やはり資生堂さんのキュレーションは自分好みだと確認できた。



そして、次に訪れたのは「椿会展 2015- 初心 -」。赤瀬川原平さんの見たことのない作品が見ることができるというので楽しみに訪廊してまず驚かされたのは、ギャラリーの構造。なんと、そこはシンプルなアートギャラリー然とした白い壁の仕切りのない四角い空間だったのです。僕は初めて行った展示空間(ホテルの室内的空間)が資生堂アートギャラリーの常設構造だと思い込んでいたのです。あのときはあの空間自体が目【め】の作品だったということをそのときやっと知るに至るという天然ぶりを発揮してしまいました。というか、あの高級ホテルばりの空間を比較的新人と言える一アーティストのために提供するなんて!! 資生堂ギャラリーが一番アーホ!ではないか?!! と大感動してしまいました。


その後、何度も観覧に訪れ、近々では荒木悠展。彼の作品も完全にアーホ!でした。アートの中のアーホ!な作品に偏愛を抱く僕にとって資生堂ギャラリーは銀座一、偏愛欲を満たしてくれる場所です。


倉本美津留
放送作家
1959年生まれ。広島生まれ、大阪育ち。『ダウンタウンDX』『シャキーン!』『M-1グランプリ』『浦沢直樹の漫勉』『アーホ!』など、数多くの人気テレビ番組やCM、イベントを手がける。近年では、笑いとアートの交わりをテーマに掲げ、プロデュースした「~アー!!ット叫ぶアート~ 大Ah!!rt展」「ヨコハマアートラリーアートと笑いの境界線」などを主宰。また、現代アートを応援するサイト「これやん」を立ち上げた。著書に『ことば絵本 明日のカルタ』(日本図書センター)、『倉本美津留の超国語辞典』(朝日出版社)『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』(美術出版社)など。
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