時間潰しのためにと、うろついていた本屋さんで大々的にとまではいかないが書店員さんの熱量の伝わるポップをつけ平積みされていた本が目に留まりました。知り合いのSNSでもレコメンドされていたことを思い出し、二巻で完結していることもあって僕は漫画『ダルちゃん』を購入しました。
読む前からなんとなく、帯を見ただけで自分にも思い当たるような生きていくことへの違和感や弱さに共感できる話なのだろうと思っていました。……違った。いやそういった部分もあるのですが、読み進めると「これは僕の物語でもある」とか「ページをめくる度に吹く風が心地よかった」と分かってる感が出るだろうと読む前から予め用意した感想は吹っ飛んでいました。ダルちゃんが愛しくてたまらなかった、その表情に、言葉に僕の心は綻んだり締め付けられたりして、ダルちゃんが僕の中に浸透してきました。そこには「ほんとうのこと」がありました。読み終えて本を閉じ、まだ本を両手で挟んだまま、しばらく僕は目を閉じていました。別に祈ってる訳ではなかったけれど、神社でお参りをするときのように目を閉じていました。眠る訳でもないのに目を閉じてできた静かな暗闇で、ダルちゃんのことを思うと浄化されていくようでした。ダルちゃんの逞しさを思うと、強風に吹かれても折れることのないたんぽぽを思い出しました。
「ダルちゃんみたいに生きたい」と祈っていました。
次の日、もう一度本屋さんに行き、『ダルちゃん』を購入しました。同じ映画を二度観た事はありますが、何度だって読み返せる本をもう一度買ったのは初めてだったと思います。感動のあまり飲み物をこぼした訳でも、あの面白さは850円では安すぎるとおひねり代わりにお金を使った訳でもありません。誰かに贈りたいと思ったからでした。世界が少し美しくなる気がして……。
『ダルちゃん』を読んだせいなのか、元々の僕のカッコつけたい精神なのかだいぶ臭いことを書いてしまった気がしますがほんとうのことを書いたのでお許しください。カッコつけてると思われても、ダルちゃんが味方になってくれるので平気ではありますが。
『ダルちゃん』は沢山の方々の味方になってくれる本だと思います。