資生堂のデザインのファンだ。美しい宝物を獲得するために、インターネットのオークションサイトをパトロールしている。「資生堂 意匠部」「資生堂 山名」「資生堂 仲條」などが検索のキーワードである。山名は山名文夫、仲條は仲條正義、憧れのデザイナーたちだ。そんな努力の結果、絵葉書、マッチケース、HOMECALENDER(ご家庭暦)、白粉ケース、コンパクト、包装紙他を入手することができた。でも、これはというものに限って、見えないライバルに競り負けることも多い。
『花椿』で連載させていただけるようになった時は、嬉しかった。関係者の方々に向かって、資生堂デザインへの愛を告げ、収集の苦労を語り、「葉書一枚が数万円になっちゃって諦めることもあります」と愚痴ると、「弊社の企業資料館でも集めていますから……」という答えが返ってきてびっくりした。なんと、見えないライバルの中に本家が混ざっていたとは、ぐううう、そんなの太刀打ちできるわけないじゃないか。
最近の収穫は「空の旅」と題された絵葉書だ。プロペラの飛行機とトランクを持った女性の姿が描かれている。イラストレーターは沢令花だろうか[※1]。この「現代化粧百態繪端書」というシリーズは、「百態」というだけに、女性が普通にお化粧しているデザインの他に、ダンス、スケート、ゴルフ、乗馬、ボートなど、当時のモダンな風俗が描かれているところが魅力。だが、その中でも飛行機となると、格段に入手が難しくなる。何故なら、資生堂マニア、絵葉書マニア、の他に、新たに飛行機マニアが参戦してくるからだ。三つ巴の戦いに歯を食いしばって入札、とうとう勝ち抜いた時は嬉しかった。でも、この宝物も、資生堂の企業資料館には何枚もあるんだろうなあ。