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Heart of Fashion

2018.11.07

フィービー後任とうわさされた、注目女性デザイナー PORTS 1961 ナターシャ・チャガールにインタビュー

文/呉 佳子

この秋行われたパリコレで一番の注目を集めたのが、フィービー・ファイロが去った後の新生セリーヌ。奇才エディ・スリマンを新たなディレクターに迎え、世界観やスタイル、方向性を一新して話題を呼んだ。
斬新だった新しいセリーヌの話は別の機会にまわすとして……、
実は、突然に過去のものになってしまった旧セリーヌのテイストが、今もまだまだ大好きな人たちの中で、「いったいこれから何を買えばいいの?!」という問題が浮上している。

さて、そこでスポットが当たっているのがナターシャ・チャガール。デザインの方向性、実力、そして女性デザイナーであることから、エディ就任発表までの下馬評ではフィービー後任の筆頭に上がっていた。

ナターシャ・チャガール

ランバン時代のアルベール・エルバスのチームで、アルベールの右腕として頭角を現し、その後はステラ・マッカートニーのヘッドデザイナーを7年務めた。フリーランスとなってからはさまざまなブランドのコンサルティングを手掛け、2015年にPORTS 1961のクリエイティブディレクターに就任。2019年春夏コレクションで丸4年経つ。
つまり、フィービーなき後のファッションマーケットで、期待感が否応なく増しているのが、ナターシャ手掛けるPORTS 1961。10月に伊勢丹新宿店で行われれたポップアップイベントを皮切りに、日本での展開を本格的に進めるという。

伊勢丹新宿店3階のリ・スタイルにて開催されたポップアプイベント。

ロンドンで発表した新作2019年春夏コレクションは「さまざまな夏の場面を捉えたもの」と、今回のイベントのために来日したナターシャは語る。開放感のあるビーチだけでなく活力に満ちた都会、暑い日差しが照りつける昼間、少し涼やかな夜など、夏のひと時を想定して、ポジティブに軽やかに描いた。すっきりと洗練されたデザインに、手の込んだマクラメなど、時間のかかる手仕事を多く取り入れたのが見所だ。「日常から少しエスケープできるような、そんな表情を狙った」のだという。

2019年春夏コレクションより

PORTS 1961は、世界中の様々なport(=港)sに思いを馳せた創業者、ルーク・タナベのグローバルなビジョンを引き継ぎ、現代的だが女性らしさは失わず、世界を飛び回るようなアクティブな女性像を描いている。スロベニアとクロアチアのハーフで、スロベニア生まれ、英国・ロンドンでファッションを学び、フランス・パリでキャリアをスタート、今はロンドンのアトリエで指揮を執りつつ、生産地のイタリアへ度々足を運ぶ、というナターシャ自身のプロフィールを追うと、彼女自身がPORTSウーマンを体現しているかのようだ。

2018-19年秋冬コレクションより

デザインする服にも現れているが、実際会ってみたナターシャはとても自然体。14歳と17歳の二人のティーンエイジャーを子に持つ彼女は、普段は子どもたちや夫と料理をしたり、映画や展覧会に出掛けたり、近所を散歩したり、と家族の時間を大切にしている。実は今回の来日に先駆けて今年4月、家族旅行で日本を訪れていた。「子どもたちも日本をいっぺんで気に入ったわ。今回出張でまた日本へ行くといったら、家族全員に妬まれたのよ」と笑う。

取材時に撮影されたポートレート。

デザインのヒントになるのは街中で見かける女性たちの着こなし。いつも周りの人たちがどんな装いをしているのか、興味深く見ている。さらに、モノづくりに欠かせない瞬間は「自分自身の本能を信じ、その声を聞くこと」。たとえば、次のシーズンのイメージを聞くと、「今はまだ非常に漠然としているけれど、はっきりしているのは、もう少し今よりもエレガントでフェニミンなもの」なのだそう。「デザイナーの仕事は“バブル”=夢を作ること。常にポジティブであることを心がけている」と語るナターシャの柔らかな笑顔の奥に、現代女性が自分らしく生きるためのワードローブ作りを志す意思が垣間見えた。

呉 佳子

ファッションディレクター

資生堂ファッションディレクター
ファッショントレンドの分析研究やトレンド予測を担当。
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