古田泰子によるTOGAは1997年の設立以来、モードの最前線を走り続けている。インタビューの後編では、今年3月にオープンした旗艦店の話から、このところの社会情勢、そして未来の展望まで、話題は多岐に及んだ。
<前編はこちら>
心地良い時間が過ごせる場所
――今年3月には、都内の旗艦店としては2店舗目となる青山店をオープンしました。
近隣には原宿店や渋谷パルコ内のショップがあるので、出店戦略としてはおや?っと思う方もいるかもしれませんが、「さまざまな境界を超える場所」として青山という場所は外せませんでした。
ブランドのベースにある「境界を超える」をキーワードに、時代や世代、性別、ジャンルの垣根を超えるような工夫を仕掛けています。
たとえば、TOGAにとって大切なアイデアソースである古着は厳選し、TOGAらしい手を加えたコレクターズアイテムとして展開しています。
ブランドを始めてから27年経ち、親子連れで買い物に来て下さる方も多いので、初めてキッズラインの靴をつくりました。
またファッション以外でも、陶磁器など私がセレクトしたものを扱ったり、店舗内にギャラリーを併設したり。「トーガ トライアングル」と名づけたこのギャラリーは、名前の通り、三角形の独立したスペース。多角的に広がるローカル・コミュニティと連携しながらエキシビションを企画・発信していきます。店内で過ごす、服以外にふれる時間を意識しています。
社会問題に絡めてファッションを考える
――青山店を訪れると、古田さんが今、気になっていることや興味をもっていることの一端に触れられる、ということですね。いつも古田さんの時代感覚の鋭さに驚かされますが、何か意識的に取り入れている情報などあるのでしょうか?
新聞を読むのが好きなんです。ファッションの世界に浸かっていると見えづらいのですが、新聞を読むことで、私たちの当たり前はかなり異質なのだなと気づかされます。土曜日に少しの時間だけでもいい、新聞を読むと、介護問題や高齢化や、社会に起きている問題に思いを巡らす機会になります。そういう問題に絡めて、服についてあらためて考えてしまいますね。
――具体的にいうと?
死に向かう人のための服を考えています。絶対に避けて通ることのできない道だし、そのときにどんな服をまとっていたいのだろう?と。
少子高齢化の社会では死にゆく人も増加しているわけだから、服という面でも選択肢を増やしたい。オシャレが大好きな私たちのための、ベッドでも病院でも着心地よく自分らしく見える服。最後まで私らしくいたい、ということに繋がると思うんです。
――なるほど、TOGAの信念に繋がるわけですね。27年間を振り返れば、人々とファッションの距離感も変わってきているような感じがしますが、古田さんはどうご覧になっていますか?
最近は服やモノが理念になっていると思います。たとえばこのデザイナーの考え方が好きだから買いたい、いくらモノが良くてもデザイナーの考えが好きじゃなかったら買わないなど。とくに若い方はブランドが掲げる理想や信念、思いについてシビアに見ている。
買い物することはただの消費ではなく、ブランドの信念に一票投じることだと思うんですよね。意思をもって買う。流して買わない。それって良いことだと思います。そんな覚悟を持って買い物をすれば、おのずと服を大事にしますよね。
作り手としての私たちも信念を大切にしながら、モノづくりを続けていきたいと考えています。