新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出をひかえている今。こんなときだから、家でゆっくり過ごすときにおすすめの作品を、日ごろ花椿に協力くださっている方々にお伺いしました。
第12回は、食の表現を探求し、新たな食の価値を提案しているアーティストの諏訪綾子さんです。標高700mの山の中にあるアトリエで、自然に触れる中で手に取った1冊です。目の前のことに翻弄されず、いつもと同じ生活を送る自然界の生き物たち。人間は彼らから学ぶことがあるようです。
自身の内面へ潜り、思考をめぐらすには、とてもいい。
連日のニュースから距離を置き、静かに放心する。内省する。
このコロナの季節が過ぎ去ったら、誰とどんな濃厚接触をしようか。想いを馳せる。
_いかがお過ごしですか、
_わたしは今、標高700mの山の中にあるアトリエにいます、毎日ウグイスやヤマガラス達との会話を試みています、
_それはなんと言っているのか気になりますね、
_春だし発情期なのでたぶん求愛でしょうか、
などとSNSメッセージのやりとりをしていたら、翌朝荷物が届いた。それがこの「求愛図鑑」。
「鳥の鳴き声から求愛行動を探る道しるべになれば」というメッセージと共に送られた素敵なギフトでした。
会えなくても感覚的には濃厚接触した気分。
わたし達は考えすぎているのかもしれない。
自意識過剰なのかもしれない。
動物たちの求愛行動という、本能的な濃厚接触からインスピレーションを得る。
夜の雑木林でパワフルな駆け引きを展開するカブトムシ、
超音波で秘密の会話をする孤独なゴールデンハムスター、
とっておきの変態ポーズで求愛するベニジュケイ、
彼らから学ぶことは多い。
ソーシャルディスタンス… じっくりと誰かのことを想い浮かべながら、
その距離感について想いを巡らすなら、今こそ。
美しい濃厚接触について考える、そんな時間を満喫しています。
ー諏訪綾子
『Act of Love』(監修:上田恵介氏、小宮輝之氏、大渕希郷、Human Research刊)
*地球上の73種類に及ぶ動物たちの求愛行動を収集し、動物の種類ではなく、その行動の種類を分類して編纂した世界で唯一の動物の求愛図鑑。