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Column

2020.04.29

【特別企画】今あなたにおすすめしたい、この作品。Vol.12

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出をひかえている今。こんなときだから、家でゆっくり過ごすときにおすすめの作品を、日ごろ花椿に協力くださっている方々にお伺いしました。

第12回は、食の表現を探求し、新たな食の価値を提案しているアーティストの諏訪綾子さんです。標高700mの山の中にあるアトリエで、自然に触れる中で手に取った1冊です。目の前のことに翻弄されず、いつもと同じ生活を送る自然界の生き物たち。人間は彼らから学ぶことがあるようです。

 

自身の内面へ潜り、思考をめぐらすには、とてもいい。
連日のニュースから距離を置き、静かに放心する。内省する。
このコロナの季節が過ぎ去ったら、誰とどんな濃厚接触をしようか。想いを馳せる。



_いかがお過ごしですか、
_わたしは今、標高700mの山の中にあるアトリエにいます、毎日ウグイスやヤマガラス達との会話を試みています、
_それはなんと言っているのか気になりますね、
_春だし発情期なのでたぶん求愛でしょうか、



などとSNSメッセージのやりとりをしていたら、翌朝荷物が届いた。それがこの「求愛図鑑」。
「鳥の鳴き声から求愛行動を探る道しるべになれば」というメッセージと共に送られた素敵なギフトでした。
会えなくても感覚的には濃厚接触した気分。

わたし達は考えすぎているのかもしれない。
自意識過剰なのかもしれない。

動物たちの求愛行動という、本能的な濃厚接触からインスピレーションを得る。
夜の雑木林でパワフルな駆け引きを展開するカブトムシ、
超音波で秘密の会話をする孤独なゴールデンハムスター、
とっておきの変態ポーズで求愛するベニジュケイ、
彼らから学ぶことは多い。
ソーシャルディスタンス… じっくりと誰かのことを想い浮かべながら、
その距離感について想いを巡らすなら、今こそ。

美しい濃厚接触について考える、そんな時間を満喫しています。


ー諏訪綾子

『Act of Love』(監修:上田恵介氏、小宮輝之氏、大渕希郷、Human Research刊)
*地球上の73種類に及ぶ動物たちの求愛行動を収集し、動物の種類ではなく、その行動の種類を分類して編纂した世界で唯一の動物の求愛図鑑。

諏訪 綾子

アーティスト

石川県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、2006年よりfood creation の活動を開始、主宰を務める。08年に金沢21世紀美術館で初の個展「食欲のデザイン展 感覚であじわう感情のテイスト」を開催。その後も東京・福岡・シンガポール・パリ・香港・台北・ベルリン・バルセロナなど国内外で、パフォーマンス「ゲリラレストラン」やディナーエクスペリエンス「Journey on the table」、フードインスタレーションなどを発表して
いる。人間の本能的な欲望、好奇心、進化をテーマにした食の表現を行い、新たな食の価値を提案している。 
2020年1月から資生堂ギャラリーにて「記憶の珍味 諏訪綾子」展を開催(新型コロナウイルスの影響で臨時休館、詳細はHPをご確認ください)。
©Rowland Kirishima
https://www.foodcreation.jp/jp/
https://gallery.shiseido.com/jp/