新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出をひかえている今。こんなときだから、家でゆっくり過ごすときにおすすめの作品を、日ごろ花椿に協力くださっている方々にお伺いしました。
第11回は、季刊誌『花椿』の「サロン・ド・バー花椿」で毎号撮影をしてくださっている鈴木親さんが、ご自身に影響を与えた作品をご紹介くださいました。不安に包まる日々のなかでも続く日常。その大切さに気づかされる作品です。
映画『恋する惑星』
有名な映画なので見てらっしゃる方も多いかと思いますが、初見の感想は、登場人物の訳の分からない行動やカメラワークを含めオシャレな恋愛映画という印象。当時の『i-D』や『FACE』(共に英雑誌)等ではこの作品からインスピレーションを受けたファッションシュートが沢山ありました。
あらためて見返すと、香港返還直前という情勢を踏まえて、その当事者達が作ったとなると違う見え方がして新鮮でした。手ブレやスローシャッター、カット分割しないドキュメンタリータッチな不安定なカメラワーク、不自然なくらいアメリカっぽいファッションや挿入歌、登場人物の理解し難い行動、これらは全て、この時代の香港の空気、ゆらゆらとした見えない不安みたいものを表現していたんだと。その時にしかなり得なかった作品。そう考えると何かできることが見つかるかもしれない作品なのかもと。
『恋する惑星』(監督・脚本:ウォン・カーウァイ)
デジタル配信中
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小説『アルケミスト』
20代の頃に読んでから何度も読み直した一番好きな本です。今、自分がしたい仕事が出来ているのも、この本のお陰でもあります。ストーリー自体は単純なので、ここでは触れませんが、今のように先の見えない不安を感じる時にこそ、作中で語られるように、夢を見ることをやめてはいけないと思います。
『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著、KADOKAWA)
映画『SOMEWHERE』
ソフィア・コッポラが初めて男性側の視点で撮った作品。そこそこ満たされた淡々とした日常の中に本当に大切なものを見つける話なのですが、さすが、ソフィアっていうくらい、ファッション好きなら楽しめるディテールが入っており、二度楽しめます。
ソフィアの演出力もありますがエル・ファニングをハリス・サビデスが相当美しく撮っているのも必見です。日本公開のタイミングが震災の時だったのもあり、観た後に日常の大切さを考えさせられた作品です。
『SOMEWHERE』(監督:ソフィア・コッポラ)
発売元:株式会社東北新社
販売元:TCエンタテインメント株式会社