京都・室町二条で300年以上続く着物メーカー問屋の矢代仁が50年後の創業350周年に向けて「着物のこれから」を考えるために始動した、プロジェクト「YSN:ゆっくりしっかりのこす」。「着物のこれから」を考え、議論するためのものです。その初回として、「着物を考えるための調べもの」と題した展覧会が京都のGallery SUGATAで開催されます。
展覧会のコンセプトは、「いま考えるべきテーマを、自由な視点でときほぐす」こと。
「職人の高齢化が進むなかで、技術をいかに受け継ぐことができるのか?」
「猛暑化が進む日本で、着物の生地がもつ機能はどう生きるのか?」
「江戸時代の柄を、現在の目線でいかに解釈しうるのか?」
「都市空間のなかで、伝統的な着物はどう映るのか?」
といった問いに対して、着物にまつわる様々な事象について、調べものがおこなわれ、成果として3つのコンテンツが発表されます。
京都市で開催される写真フェスティバル「KG+」のプログラムとして、5月1日(水)から12日(日)まで、矢代仁の創業の地でもある「Gallery SUGATA」で開催されます。フェスティバルと合わせてせひ訪れてください。
1:移動のなかの着物を写真で捉える
現代の日常のなかで、着物をビジュアル化することはいかに可能なのか? ファッションの文脈でも活躍するスタイリストと写真家に、電車や駅といった移動にまつわる空間のなかにありうる、「着物のあり方」が考えられました。
【作品制作:néné petit(岡﨑果歩、中本ひろみ)】
2:着物の生地の「シボ感」を3Dスキャンして解析してみる
将軍の肌着に起源をもつとされる着物「御召(おめし)」の生地を、現代の冷感インナーなどと比較しながら、高さスキャン、高解像度スキャン、CTスキャンという3つの非破壊手法でデータ化されました。展示では、3Dプリントや空間再現ディスプレイにより、御召がもつシボ(注:生地の細かい凹凸)という独自の風合いを様々な角度から体験できます。
【リサーチ・展示物制作:BASSDRUM(森岡東洋志、小川恭平、池田航成)】
3:江戸時代に起源をもつ「柄帳」を3つの視点で分析する
デザイン、アート、テクノロジーのプロフェッショナルがもつ目線を通して、矢代仁に伝わる江戸時代の柄データベース「裂地台帳(きれじだいちょう)」が分類され、その中からピックアップされました。現代の視点から、新しい価値を再発見されました。
【執筆:小澤京子(和洋女子大学教授、美術史研究者)、kye+iwm+llm(リサーチャー、デザイナー、プログラマー)、吉田勝信(デザイナー、プリンター、採集者)】
YSN ゆっくり・しっかり・のこす
「着物を考えるための調べもの」
2024年5月1日(水)〜12日(日)
11:00〜18:00 全日営業 入場無料
【5月1日(水)の11:00から12:00まで、プロジェクトチームによるギャラリーツアーが開催されます】
Gallery SUGATA(京都府京都市中京区蛸薬師町271-1 然花抄院室町本店内)
参加パートナー:小澤京子(和洋女子大学教授、美術史研究者)、kye+iwm+llm(リサーチャー、デザイナー、プログラマー)、néné petit(岡﨑果歩、中本ひろみ)、BASSDRUM(森岡東洋志、小川恭平、池田航成)、吉田勝信(デザイナー、プリンター、採集者)
ディレクション:須田伸一
アートディレクション:米山菜津子
空間設計:Siin Siin
プロジェクトマネージメント:原田ふくみ
責任編集:矢代真也(矢代仁)
主催:YSN Studio(株式会社矢代仁)
協力:Gallery SUGATA、川口友子(江戸東京博物館)
享保5年(1720年)に京都室町で創業した着物のメーカー問屋。「御召」とよばれる第11代将軍・徳川家斉が愛好した肌着に起源をもつとされる織の着物を祖業とする。現在は織・染・繍のオリジナル商品、人間国宝をふくむ作家の作品を全国の百貨店や各有名呉服店に展開している。
〒604-0021 京都市中京区室町通二条南入蛸薬師町272-2 075-211-2421
http://www.yashironi.co.jp/
https://www.instagram.com/yashironi_official/